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Notes中山道―巣鴨 @田村果実店

マタタビとマタタビ酒―カリンの話余聞

 都営三田線巣鴨駅A2出口の階段上り口にかけられた「カリンの田村」の看板が、ここを通るたびに気になっていた。巣鴨のとげぬき地蔵のある、地蔵通り商店街に並ぶ店のことばかりに眼がいって、巣鴨駅前周辺はほとんどノーマークであった。

 巣鴨駅前の真性寺門前から続く地蔵通り商店街は、白山通りから分かれてほぼ一直線に板橋の先まで続く中山道の旧街道である。この道筋を歩いてみるまえに、前から気になっていた「カリン」の理由を同店のご主人田村孝七さんに尋ねてみたのが、味探検第230回(街道137回)の記事。

 

カリン飴と切干しカリン

 我が家の庭にも毎年実をつけるカリンを、店の看板にしたきっかけは、20数年前にさかのぼるそうだ。当時、なぜか青果市場でカリンが入荷しても余るばかりで、何か利用できないかとご主人が考えた末に、実験的にカリンを輪切りにして、砂糖漬けにして瓶詰めで売り出したら、けっこうさばけたのだという。そのうち、巣鴨の地蔵通り商店街が「おばあちゃんの原宿」と呼ばれるようになり(田村さんによれば、毎日新聞記者の記事がきっかけになったということだ)、秋から冬場の風やのどに効くといわれるカリンが注目されるようになり、他店も扱うようになったという。田村果実店では、砂糖より、もっとカリンと相性のいい蜂蜜漬けにして「かりん純粋蜂蜜漬け」として売りだし、ヒット商品となる。

 このほかに、「かりん蜂蜜漬けあめ」を商品化。これも独自のブランドとして、この店だけしか買えないカリン飴として人気があるという。この飴、たしかにさっぱりとした甘さで、のど飴のようなしつこさがなく、我が家でも大好評だった。ほかに、カリンのシーズンオフに、カリンを利用できればと考案した、輪切りにして店の屋上で天日乾燥させた「切干しかりん」もある。砂糖と焼酎につけておくと、カリン酒ができる。水と氷砂糖で土鍋で煮込むととろりとしたカリンジャムができあがる。

 

マタタビの虫えい果実とは

 田村さんからきいたマタタビの話のほうが、山菜好きのぼくにとってははるかに面白かった。カリンが山梨から入荷する10月までの8月〜9月は、マタタビ酒用のマタタビが入荷するという。価格は、1升の焼酎に漬け込む500gのマタタビが2500円。

 このマタタビを扱うことになったきっかけは、お客さんの中に学校の先生がいて、あるとき福島県田村郡船引町に一生の仕事として障害者と暮らす介護施設を作り、現金収入のひとつとして東京で売れないかと、彼から相談をされて、マタタビが送られてきたことからはじまったという。

 このマタタビ。夏に梅の花に似たかわいらしい白い花をつけ、とてもいい香りがする。果実は、8月から9月、長楕円形の先がとがった形をした青い実がなるのだが、中に、マタタビバエというムシがつぼみに産卵をして、それが実になるとユリネを小さくしたような扁平の実がなる。これを、虫えい(エイという字は、「疒」(ヤマイダレ)+「嬰」(エイ))と呼び、果実酒にして、体を温める効用ありとして珍重される。虫えいのマタタビの果実を、漢方では「木天蓼」(もくてんりょう)という。

 この虫えいもののマタタビ果実が多く含まれるものを、福島の施設のボランティアや利用者たちが里山に分け入って採取して送ってくるのだという。

 取材のあと、巣鴨にいったついでに店先をのぞいたら、その虫えいのマタタビが売られていたので、写真で記録をと思い撮ったので、ここに載せておくことにしよう。

 

 〔写真入る―準備中〕

 

 田村さんからいただいた、[マタタビ酒の作り方]のメモは次の通り。

 

マタタビ酒の作り方

 ○材料=またたび         500g

       蜂蜜            1カップ

       ホワイトリカー      1.8リットル

 ○作り方=マタタビを手早に洗い、ザルにあけて水を切り、よく乾かす・容器にマタタビ、蜂蜜、ホワイトリカーを入れ、冷所にてねかす。6ヶ月以上たった方が飲みやすくなる。

 ○効能=マタタビには、大脳を刺激させる成分があり、また強心剤の効能もある。疲労回復によく、体を温め腰痛や痛風、精神安定などに効く。

参考文献

佐竹秀雄・大沢章『山菜』1974年,農山漁村文化協会

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