味探検 江戸前シリーズ34(東京新聞1997年9月18日首都圏情報ゆめぽっけ掲載) 

中野区新井薬師・浜田豆腐店

夫婦円満、豆腐もビッグサイズ

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 日本橋に与八という豆腐屋がいた。天保13(1842)年というから幕末に近い頃のこと。ある朝与八は起きてびっくり。長屋中で自分の名前を呼んでいる。緊縮財政下の経済改革の世に、「豆腐屋与八、豆腐価廉価に売る故に官よりこれを賞す」という触書きが出されたというのである。

 与八の豆腐、味はもちろん、値段も1挺(ちょう)56文の相場より4文安い。さらに、縦1尺8寸、横9寸の豆腐を「十あるひは十一に斬り分けて一挺となづけるを例とす。与八のみこれを九挺に斬りて価五十二文に売る」ことが表彰対象となったらしい。

 安くてうまくて、他よりも大きい豆腐を「自分の性分ですから」と作り続ける浜田克雄さん、照子さん。新井薬師門前近くで、昭和3年開業という2代目豆腐屋さん夫婦。

 「うちはなにも特別な材料は使わない。お客さんにずっと食べてもらうには、こだわって高い材料を使って無理しちゃだめ。そのかわり丁寧に時間をかけて作ります」と克雄さん。大豆にも良し悪しがあるらしく「夫婦ゲンカさせんぐらいの豆もってきて」と照子さん。

 豆腐(150円)は通常の倍近いおおきさ。揚げたての生揚(150円)や五目ガンモ(40〜160円)がこれまたうまい。

 この店の近くに住んでよかったと思わせる夫婦円満豆腐の味である。

 (中島 満)

 

注:記事内容は取材時のものです。現時点で価格・営業時間・経営内容等変更がある場合があることをご了承下さい。

 

☆「浜田とうふ店」メモ

 ◎残念無念!:2008年1月某日店頭に「休業閉店」の貼り札を見つけてしまった。:中野の自慢できる名店中の名店、ここにあり。記念碑のつもりで、この記事を、ここに残しておこう。浜田豆腐店の親父さん、女将さん、本当にご苦労様。でも、もう、この豆腐を食べられないかと思うと、残念でなりません。:中野区新井5-8-3。西武新宿線新井薬師駅南口下車。新井薬師商店会通り一つ目の信号を薬師門前通りに入り300m、新井1丁目信号の手前1本目の道右角。歩き7分。電話の対応はできません。営業時間午前11時5分〜11時50分。午後3時〜売り切れるまで。定休日曜、第3土曜日。

取材メモ  江戸幕府の粋な庶民表彰のはなし―豆腐屋余聞 ちょうとまえに豆腐1丁10円値上げして160円になったが、その評価はまったく同じで、連日10人ぐらいは必ず並んでいる。ここの味を見る場合は、まず木綿豆腐の購入をすすめたい。湯豆腐なら、キヌと決めているかたは、浜田豆腐店の木綿で味わってみると、そのありがたさがよくわかるであろ。小生などは、中野区の区外の人に誇れる宝はなにであろうかというときに、「浜田豆腐店の木綿豆腐」に勝るものはないと思っている。

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