味探検食単随筆 贋食論もしくはモドキ食品考


 

日本人は芸術的贋食がお好き

 


も く じ

まえおき

ガンモドキの発明

加工食品の定義

懐石料理

精進料理

等々

 

まえおき―――世の中嘘つきと税金泥棒ばかりのいやな日本になりました。食単随筆のジャンルでいうなら食品の違法表示や不正表示、ごまかし取り引きと、うんざりさせられます。

 ところが、日本の食文化の歴史をふりかえってみると、食品のジャンルに本もののかたちを真似たり、味まで似せた食品の存在や加工や料理技法が厳然として存在しています。「ガンモドキ」しかり、「鴫焼き」しかり、「ぎせい豆腐」しかり。「ぎせい」は「擬製」であり、辞書を引けば「本物をまねて作ること」(広辞苑)とある。近年では「カニ風味カマボコ」しかりである。

 これらの食品は、もとより人を騙そうという悪意に基づくものではなく、“贋物”にはちがいないのだが、まがいものではなく、れっきとした伝統食品と同じ系統に属するものであり、食品加工の教科書をひらいてみても、「モドキ食品」とか、最近ではコピー食品という位置付けを与えられています。「もどき」という言葉は、能狂言や歌舞伎など芸能の「もどき役」にみられる如く、主役に対し茶化したり、動作をまねたりして滑稽を演ずる役回りの「もどく」行為に発し、(揶揄⇒摸倣)が相手に対する「非難」の意味をも含むことから、マガイモノ、ニセモノをさす言葉に転化していったようです。

 芸能における「もどき役」とは、最近では、ぼくの勝手な引用だけれども、黒沢明の「影武者」に登場するピーターが演じた役回りの悲哀を込めた滑稽な行為がそうであろう。だいたいが、影武者そのものが、もどきであるわけだから、黒沢は、人間そのものを、もどきの二重三重構造の世界をとおして描きたかった、そんな気がします。つまり、ガンモドキや擬製豆腐の本物である獣肉や豆腐に対する「もどき」という言葉を使った時代には、悪意のダマし行為の意味はないばかりでなく、「こいつは本物じゃないが栄養価も味だって本物をしのぐのだよ」という食に対する明確なる主体性を感じ取ることができます。

 ところが、だんだんと、本物に対するニセモノをさすようになり、最近では、すっかりニセモノと同義語、本ものより低位にランクづけするときに使用するようになってしまった。

 実を言うと、ぼくの高校生時代の山岳部でのあだ名が「もどき」だったので、この言葉には妙に愛着があって、何かの機会に、「もどき」の定義にもとづいて懐石料理や精進料理の世界について調べながら日本の伝統加工食品論を書こうとおもっていたのです。

 というような発想から、もどき論序説ぐらいのつもりで、まずは日本の食文化の中にしめる「贋食」文化といったようなことを、思いつくままに書いていくことにしよう。

 

以下―under construction

 

●ガンモドキの発明  

(MANA)


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