漁協実務必携最新漁業権読本

―漁業権の正確な理解と運用のために―

細目次の内容

はじめに

第1節 漁業権とは何か

 

第1話 漁業権のおいたち
1 江戸時代の「海の利用慣行」
2 「海の入り会い慣行」の「漁業権」としての法制化(明治漁業法)
3 明治漁業法における漁業権の種類

第2話 昭和24年に行われた漁業制度の改革
1 明治漁業法から引き継がれた法律的性格

   図1.2.1―新旧漁業権の対照
2 新たに設けられた4つの制度
 
 (1)員外者の保護規定
  (2)漁業権の共同申請と共有請求の規定
  (3)昭和37年及び平成13年漁業法改正時に追加された「書面同意制度」
  (4)平成13年漁業法・水産業協同組合法改正時に追加された「部会制度」
 
  図1.2.2―漁業権と入会権のおいたち

第3話 漁業権の種類
1 漁業権の種類

  (1)共同漁業権
  (2)区画漁業権
  (3)定置漁業権


第4話 組合管理漁業権と入漁権
1 経営者免許漁業権
2 組合管理漁業権
3 入漁権
4 漁業権又は入漁権行使規則
5 漁業権の分割・変更・放棄及び漁業権行使規則の制定・改廃に当たっての書面同意制度

第5話 漁業権の法的性格
1 漁業権の法的性格
 
 (1)漁業権は水面の占有権ではなく、漁業を営む権利である。
  (2)漁業権は、区域、漁法、漁業種類を限定した権利である。
  (3)定置漁業と区画漁業は、漁業権又は入漁権に基づかなければ営んではならない漁業である。
  (4)漁業権は、存続期間の定めがある権利である。
  (5)漁業権の分割・変更については、知事の免許が必要とされている。
  (6)漁業権は、物権とみなされる権利であり、民法の第2編の物権編(第175〜398条)の規定が適用される。
  (7)漁業権は財産権である。


第6話 漁業権の保護と制約
1 漁業権の保護
  (1)漁業権侵害罪
  (2)物権的請求権
  (3)損害賠償請求権

2 漁業権の行使方法に対する制約
 
 (1)漁業権の制限又は条件
  (2)漁業調整委員会指示
  (3)休業中の措置


第7話 漁業権免許の手続き

@漁場計画―

1 漁業権の免許手続の概要
   
図1.7.1―漁業権免許の手順

2 漁場計画の樹立と公示
3 「漁業の免許をする必要」の解釈について
4 「漁業調整に支障を及ぼす」の解釈について
5 「公益に支障を及ぼす」の解釈について
6 漁場計画の変更 
7 知事が漁場計画を樹てない場合の措置
8 免許申請と漁業調整委員会への諮問

第8話 漁業権免許の手続き

―A免許の適格性等―

1 免許をしない場合
2 免許の適格性

第9話 漁業権免許の手続き

―B定置漁業の優先順位―

 

第10話 漁業権免許の手続き

―C区画漁業の優先順位―

1 区画漁業(特定区画漁業及び真珠養殖業を除く)の優先順位
2 真珠養殖業を内容とする区画漁業の優先順位

第11話 漁業権免許の手続き

―D特定区画漁業の優先順位―


第12話 漁業権の取り消し及び消滅
1 漁業権の取り消し
2 漁業権の消滅

第13話 漁業権に関係するその他の規定 @漁業権
1 漁場に定着した工作物の買収

2 標識の設置の命令・破壊等に対する措置 
3 土地及び土地の定着物の使用 

第14話 漁業権に関するその他の規定 Aその他の法令
1 漁業法に基づき制定されている規則(都道府県漁業調整規則例)
  (1)漁業権漁場内の土砂採取等と漁業権
  (2)漁業権又は入漁権に基づく行為を規制の対象外とするもの
  (3)漁業権の免許申請や行使規則の認可申請の様式
  (4)漁具標識の文字が薄くなったり、標識自体がなくなった場合。

2 漁業権の取消・消滅等を定めた法令
  
(1)公有水面埋立法(漁業権者・入漁権者の同意は、埋め立て免許の要件)
  (2)土地収用法
  (3)農地法
  (4)電気通信事業法

3 その他の法令
  (1)水産業協同組合法
  (2)漁業協同組合合併促進法
  (3)海洋水産資源開発促進法
  (4)持続的養殖生産確保法
  (5)河川法 
  (6)民事訴訟法


第15話 漁業権の免許処分等に不服がある場合の適用法令

1 行政不服審査法

2 行政事件訴訟法


第2節 漁業補償と漁業権

第1話 漁業補償契約とは何か
1 損害賠償とは何か
2 漁業補償契約と損害賠償との関係
3 漁業補償と漁業法との関係

第2話 漁業権放棄について
1 漁業権放棄あるいは漁業権の一部放棄の必要性
2 漁業権が放棄された水面について
3 漁業権の一部放棄と変更免許

第3話 公有水面埋立法の仕組み
1 公有水面埋立法の仕組み
   (1)埋立免許の取得
   (2)漁業補償
   (3)埋立工事の実施
   (4)免許権者による埋め立て地の所有権の取得

2 国の損失補償規定
(参考)漁業補償に対する批判の検討

第4話 漁業補償契約と補償金の配分手続き
1 共同漁業権漁業に関する漁業補償契約の締結の手続き
2 共同漁業権放棄の手続き
3 埋立同意の手続き
4 漁業権漁業に関する漁業補償金配分の手続き

第5話 昭和37年漁業法改正の検証―組合管理漁業権の入会権的性質は変質したのか
1 問題の所在
2 共同漁業権が「海の入会い的権利」としての性質を失ったとする見解
3 共同漁業権が「海の入会い的権利」としての性質を有するとする見解
4 考察

   (1)関係地区制度
   (2)各自の削除と書面同意制度、漁業権行使規則例
   (3)員外者の保護規定、漁業権の共有申請、共有請求の規定
   (4)「共同に利用して」の意味
   (5)漁協組合員と漁業行使権者

参考1 二重補償問題

参考2 正准組合員と漁業法・水協法

参考3 漁民及び地元漁民について

参考4 地元地区・関係地区の構成員は世帯単位と個人のどちらで考えられるか

参考5 組合管理漁業権を免許された組合に属さない関係地区漁民の漁業補償

参考6 特定区画漁業権の新規免許に関しての適格性と書面同意制度の扱いの違い

参考7 漁業補償に関する判例


第3節 漁協合併と漁業権

第1話 漁協の多面的性格
 (参考)「漁民の経済連合体としての漁協」と「漁場管理団体としての漁協」の根拠法

第2話 漁協合併の問題点 
1 漁協合併の阻害要因
   (1)漁業権行使についての利害の対立
   (2)財務内容の格差

2 漁協合併に伴う共同漁業権の取り扱い
 (1)漁協合併に対する漁民の不安
 (2)関係地区の認定問題とその解決策
 (3)風成事件の教訓と平成十三年度漁業法改正
 (4)大分県白木漁協裁判について
 (5)漁協合併に伴う漁業権の扱いに関する誤解。

第3話 漁協合併に対する漁民の不安の解消策
1 不安を残さない方策

 (参考)韓国の漁業権と漁村契について
2 漁協合併を行う場合に取るべき措置
3 合併後の漁協の運営における「合併契約」内容の履行の保障について
4 漁業協同組合合併助成法の一部改正

第4話 漁協合併に伴う定置漁業等漁協自営漁業の取り扱い

第5話 漁協合併に伴う山林等の漁協財産の意義及びその取り扱い

(参考) 合併阻害要因解消方策の実例
(参考)漁業協同組合名義の村落有の入会地の運営

 

第4節 海は誰のものか?―マリンレジャーと漁業権―

第1話 海は誰のものだろう?
1 海面の所有権について―公共用水面には所有権は設定できない

2 海面に設定される権利―公共用水面と漁業権

3 漁村におけるマリンレジャーとの対立に起因する裁判の事例

 〔事例1〕家島諸島周辺海域における「遊漁権確認、妨害排除、損害賠償請求事件」
 〔事例2〕伊良部町漁協の漁業権海域でのダイビング全面禁止等の仮処分申立事件
 〔事例3〕大瀬崎の潜水料徴収に関する損害賠償請求事件

4 「漁業とマリンレジャーの対立」の本質はどこにあるのか

  (1)漁業とマリンレジャーのトラブル事例は協定締結の有無で区別すべきである

  (2)協定が締結され協定締結者に協調関係が保たれている場合は、それ以外の者にも協定の遵守に対する要請行為が認められる傾向にある

  (3)マリンレジャーと漁業の対立といわれるものは、実際には地元住民とよそ者の対立である場合が多い

  (4)江戸時代の水面利用の基本理念である「磯は地附沖は入会」は現代でも通用するのか

第2話 公共用水面の利用に関する権利
1 地元集落に権利が付与されているもの

  (1)共同漁業及び特定区画漁業等の組合管理漁業権・入漁権(漁業法)
  (2)入漁権(漁業法) 

   (参考)漁業権侵害とはなにか

  (3)地先権(慣習)

2 特定個人・法人が特定の区域の公共用水面を優先的・排他的に利用する権利
  (1)定置漁業及び一般の区画漁業等の自営漁業権(漁業法)
  (2)遊漁権(判例では否定されている)

3 公共用水面における損害賠償請求権

  (1)一般的不法行為

  (2)故意又は過失により他人の権利を侵害する行為に基づく損害賠償請求権の成立要件


第3話 公共用水面の利用調整のルール
1 海面の利用を一般的に管理する法律は存在しない
2 公共用水面における各種利用の調和のための法令
   (1)漁業同士または漁業と遊漁その他の水産動植物の採捕を伴うものの利用調整
   (2)漁業とレジャー

3 公共用水面における各種利用の調和のための自主的な協定
 (1)漁業者同士の協定
 (2)漁業者と遊漁者の協定
 (3)漁業者とマリンレジャーとの協定
4 公共用水面における各種利用の調和のための話し合いの機関

5 公共水面の利用調整のマナー

第4話 大瀬崎ダイビングスポット訴訟事件
1 大瀬崎ダイビングスポット訴訟事件とは
2 裁判の経過
3 第一審静岡地裁沼津支部判決(平成7年9月22日)の反響
 (1)漁業権侵害の受忍料について
 (2)一村専用漁場の慣習に基づく水面利用料としての徴収について
 (3)漁協側の潜水料徴収の法的根拠を一部認めた判決
 (4)第一審判決の反響
4 第二審東京高裁判決(平成8年10月28日)
 (1)漁業権侵害の受忍料について
 (2)一村専用漁場の慣習について
 (3)被告の損害賠償請求は棄却されたが不当利得返還請求を認め漁民側敗訴の判決
5 第2審判決の反響
6 最高裁への上告
 (1)額を具体的に算定することができるような損害を認めることはできないため、漁業権侵害の受忍料とは認定できないとした高裁判決は、民法第703条の解釈を誤っている
 (2)原判決には、判決に影響を及ぼすこと明らかな法令の違背がある
7 判例タイムスでの取り扱い(平成9年8月1日)
8 最高裁判決(平成12年4月21日)
9 最高裁差し戻し東京高裁判決(結審)
 (1)合意の有無について
 (2)合意が成立していた場合の内容、効力等について

第5話 ダイビング事業と漁協
1 ダイビングスポット開設による漁協・漁村の活性化
   (1)注目されるダイビングスポット事業
   (2)ダイビング事業への漁協の関わり方
   (3)漁協によるダイビングスポット事業の収支

2 事業実施に際しての検討指針
   (1)ダイビング事業の導入に関して
   (2)ダイビングサービス事業の動向
   (3)ダイビングサービス事業導入への漁業者側の対応のあり方
   (4)ダイビング事業への参画方法
   (5)漁業管理と協力金
   (6)用船対策
   (7)潜水海域の指定
   (8)安全対策と事故対策
   (9)資源管理対策


第6話 マリーナ事業と漁協
1 マリーナ事業について
2 事業実施に際しての検討指針
   (1)漁業との調和要因
   (2)漁業関係者経営マリーナの経営成立条件

 
第7話 ボードセイリングと漁協
1 ボードセイリングとのトラブル要因
2 ボードセイリングへの対応指針
   (1)漁業との調和方策
   (2) 協定等の内容
   (3)ボードセイリング事業への参画


第8話 PW、いわゆる「水上バイク」と漁協
1 PWと漁業との水面利用の実態について
2 PWへの対応状況について
  (1)PW安全協会
  (2)ルールとマナーによる調整
  (3)条例による規制

3 漁業法からPWを検討する
4 PWと漁業との調和方策について


第8話 漁業自営の釣りぼり事業

1 漁協自営釣りぼりの実態
2 事業実施に際しての検討指針
 (1)導入に当たって
 (2)施設整備の計画
 (3)運営方法の検討
 (4)水面の占用許可

第9話 体験漁業と海上運送法等の法令との関係
1 海上運送法と体験漁業

 (検討1)「たこつぼ、固定式刺し網、定置漁業体験」は、海上運送法の対象となるのかどうかについて。
 (検討2)単発の漁業体験イベントは、海上運送法の対象になるか。

2 小型船舶検査と体験漁業(小型船舶検査機構の見解)
 (1)用途が小型遊漁兼用船の船舶により遊覧航行をしようとする場合
 (2)用途が、遊漁船の船舶により遊覧航行をしようとする場合について
 (3)用途を変更した場合の旅客定員

第5節  密漁対策と漁業権

第1話 密漁の実態と適用法令
1 沿岸域の密漁の実態
2 なにが密漁なのか(適用法令の検討)
3 適用法令
   (1)漁業関係法令違反(漁業権、漁業行使権侵害罪を除く)
   (2)漁協の内部制裁又は裁判手続きによるもの

     表5.1.2―漁業関係法令違反等に対する罰則例
4 漁業権侵害について
   (1)漁業権・漁業行使権侵害罪 
   (2)親告罪
   (3)漁業権、漁業行使権の侵害行為の態様
   (4)漁業権及び漁業行使権の侵害に対する救済手段

5 都道府県漁業調整規則によるに規制・違反例について
  (1)漁業権侵害罪と漁業調整規則違反との違い

  (2)海面における非漁民の漁具・漁法制限一覧
6 その他の漁業関係法令違反
   (漁業関係法令違反)
   ア 漁業法違反(漁業権、漁業行使権侵害罪を除く)
   イ 水産資源保護法違反
   ウ 農林水産省令・規則違反
   エ 外国人漁業の規制に関する法律
   オ 刑法
   カ 条例 
   キ 法令の総合活用―漁港法/船舶法・漁船法・船舶安全法/船舶職員法/電波法/消防法/高圧ガス取締法

8 具体的事例の検討
  (1)歩行中の採捕の場合
  (2)素潜りでの採捕の場合
  (3)釣りでの採捕の場合
  (4)その他水中銃使用等の場合


第2話 密漁対策の実際
1 漁場の監視活動の法的裏付け
2 漁場監視活動の概要
(参考)現行犯逮捕又は被疑者を確保をする場合の留意点
3密漁防止体制の整備
  (1)密漁防止のための協議会開催
  (2)監視員の確保・任命
  (3)監視員のための措置
  (4)監視員の研修
  (5)漁業者団体での警察・海上保安庁OBの雇用

4 漁場を監視する場合の身分証明書の携帯等
5 隣接漁協等との連携
6 取締機関等との連携
7 通報の連携体制の整備
8 密漁の内容別の対応マニュアル
 (1)暴力団等による潜水器等を用いた組織的密漁
 (2)非組合員によるアワビ・イセエビ・タコ・アサリ等漁業権対象種の素潜り、  釣り等での採捕
9 密漁実態の把握
10 通報の仕方
11 告訴の手続き
12 検察庁への厳罰適用の要請
13 民事訴訟の手続き

 

あとがき/参考文献/事項索引

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