浜に生きる 4 


essay,interview

千葉県立木更津高校生物部部長 磯貝徳之さん

 

僕たち干潟探検隊だ

 

 

 前回の阿部先生は年輪を積んだお魚ご意見番なら、今回登場する磯貝君は若鮎のごとき高校2年生。千葉県立木更津高校生物部14名を率いるリーダーとその仲間たちの活動にスポットを当ててみた。
 木更津高校生物部の活動の舞台は、木更津市内を流れる小櫃川(おびつがわ)の河ロにひろがる盤洲干潟である。いまや、この小櫃川河口干潟は、東京内湾に残された自然のままの干潟としてがぜん注目を集めている。
 昭和58年には、朝日新聞による「21世紀に残したい日本の自然百選」にも選ばれた。生物部による干潟の動植物調査は、このときが始まりというから、すでに今年で11年間も続けられていることになる。

 平成3年には、この継続調査と、並行して進められてきたゴミのクリーン作戦も評価の対象となり朝日森林文化賞・自然保護奨励賞を受賞している。この他、身近な自然を研究対象に日本学生科学賞・総理大臣賞など数々の賞の受賞をするなど、高校生の水準を越えた高い評価を受けてきた実績がある。昨年、マリンブルー21の定点環境調査団体にも選ばれている。
 「生物部の活動は3K。春と秋の二回行う干潟の定点調査は、50センチ四方、20センチの深さの砂を掘って、そのなかにいる生物たちをふるいで漉すようにして種類、数などを記録します。穴掘りとふるい漉し、重労働なんですよ」と磯貝君。
 「初めて先輩に干潟に連れていってもらったとき、干潟の泥に足を浸かりながら、こんなだだっ広いところが近くにあったんだ」とびっくり。入学早々の春、「アメフラシの卵をはじめてみたんです。ダイダイ色をしているその不思議なものにひきこまれてしまった」という。ウミゾウメンともよばれるアメフラシが春産む卵の「発見」が、磯貝君にとっては海の生き物と環境を考えるきっかけを与えてくれたのだそうだ。
 小櫃川河口千潟の特徴は、前浜と後浜が原始の姿でそのまま残されているということにあるという。砂浜から陸地にむかって葦原がひろがり、その間をクリークが縦横に走る、さらに小湖を含め塩湿地帯が形成されている。東京湾内で見られなくなったというより、全国的に見ても大変に貴重な自然環境を維持している。
 年に一回、木更津高校生物部の生徒と、顧問の先生、地元の干潟を守る会の人達が呼びかけて「干潟まつり」が実施される。
 9月25日には第6回干潟まつりが行われた。その実行委員長であり、元生物部顧問でもある藤平量郎さんは、この干潟について、「現在まで、こんな太古の姿そのままに残ったことは奇跡」とまで話している。
 生物部を「体育会系文化部」、「干潟探検隊」とよぶ磯貝君は、スコップで砂を掘ってニホンスナモグリという薄いピンク色をしたシャコに似た生き物を手にとって見せてくれた。
 「ニホンスナモグリは本当はもっと沖の泥質を好みますが、最近干潟を堀ると普通に見られるようになりました。干潟が泥っぽくなってきているような気がします。先輩たちが残してくれた10年間のデータを元にして、これからは生物生息の変化は何が原因なのかを考えていきたい」という。(MANA

――全国共済水産業協同組合連合会(共水連)機関紙『暮らしと共済』1994.84掲載

TOP



HOME    海BACK  浜に生きるINDEX    次▼

 


投稿・ご意見はこちらへ

copyright 2002〜2010,manabook-m.nakajima 

hamaniikiru,kisaradukoukou,kisarazukoukou,obitugawa,

obitugawahigata,higata,kankyouhogo,touheikazuo,kankyo