真名真魚字典

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　真名真魚辞典ＴＯＰにＢＡＣＫ｜９画←｜→１１画

和名・一次名称・俗称別｜引用文献・参考文献｜引用文中の古書名注｜引用文中の人名注｜編者凡例

【箋注倭名類聚抄】抄訳｜魚字尽成立関連年表

１０画

[兼’]｜［畜］｜［甫／寸］｜［高］｜[翁]｜[烏]｜[郎]｜[鎖（金→魚）]｜[]｜[唐]｜[鬼]｜[貢]｜[旁]｜[蚤]｜[隻]｜［卯／田］［留］｜［怨（心→田）］｜[鬲’]｜[馬]｜[時]｜[貔（豸→魚）]｜[虔（文→魚）＋攵]｜[師]｜[鰥]｜[茲]（クサカンムリ＝十十）｜｜[晏]｜[騰（馬→魚）]｜｜［榻（木→魚）］｜[納]｜［謠（言→魚）］｜［差］｜［差／魚］｜［豈］｜［骨］｜［格］｜［盍］｜［容］｜［脊］｜［虔］｜[鰭]｜｜[養（良→魚）ソウの本字][菱’（夂→魚）]｜[鰮][鰛]｜｜｜[貴（貝→田）]｜｜｜[倉]｜｜｜｜[鰯]｜[神’]｜[央／皿]｜｜［庶］｜［連］

　　[魚＋兼]

○邦名　（1）シタヒラメ・ウシノシタ(集覧｢水産名彙｣)。(2)＊魚＝カレイ(同｢水産俗字解｣｢水産名彙｣)、シタビラメ・ウシノシタ（同「水産名彙」）。

○【新撰字鏡（天治本）】魚部第八十七　（518-1）＊｛公兼反。［魚＋婁］。｝／（520-5）［魚＋婁］｛力朱反。＊。｝……字形用例は［魚＋婁］に掲載。

○参考（１）：［魚＋婁］（11画）。

○参考（２）：鰯（10画）：［魚＋庶］（１０画）。［魚＋鹿］（１１画）。

　[魚＋畜]

○邦名　用例不詳。

　［魚＋榑−木］　［甫／寸］

○邦名　 （１）イルカ。（２）コメ・エソ（集覧「水産名彙」）。（３）＊魚＝エツ（同「水産俗字解」「水産名彙」）。

○参考：イルカ系：[魚＋孚]（７画） に用例を記す。：[鯆]（７画）：［魚＋布］フ(５画)。[魚＋市]（５画）。[鮪]（６画）。鯆（0732-46177）（７画）。[駸（馬→魚）]（７画）。[菊−クサカンムリ]（８画）。［甫／寸］（１０画）。[既’／魚]（１１画）。[普’]（１３画）。

　[魚＋高]

　1161　＊2　大辞典の記載なし。ツクリの「��」は、高の俗字。

○邦名　エビ。イセエビ。

○【類聚名義抄(観智院本)】僧下一四　＊2、＊1{或正。上。浩。大鰕。エヒ。}

○参考：鰕（9画）。

　　[魚＋翁]

○邦名　用例不詳。

　［魚＋烏］

○邦名　イカ。

○［魚＋烏］鱸（ウロ）は、淡水魚の一種。形はカジカに似て、口が大きい。ヤマノカミ。（学研・新漢和。2040）

○参考 （イカ）：［烏賊］（その他１０画）に同義異体字及び用例を詳細に記した。［魚＋則］（９画）。［魚＋賊］（１３画）。

　［魚＋郎］

○邦名　アジ。用例不詳。

　［鎖（金→魚）］

○邦名　用例不詳。

○

　[魚＋唐]

○邦名　(１)オコゼ（集覧「水産宝典・大日本水産会編」「水産俗字解」「水産名彙」）。（2）タゴシ・ハマチ（同「水産俗字解」「水産名彙」）。（3）キス・キスゴ・ハリマチ（同「水産名

新撰字鏡（天治本）	節用集 （京大DB橋本経亮旧蔵本） 上（ヲ）右（ハ）
字鏡集（寛元本）	類聚名義抄（３）		類聚名義抄（２）	類聚名義抄（１）

彙」）。（4）＊魚＝サワラ（同「水産俗字解」「水産名彙」）。

○1010-2　は同字。

○【字鏡集（寛元本）】巻三（３８６−４）　＊〈唐〉タフ｛徒郎反。タコシ。■タコシ。ヲコシ。｝〈［乇］〉……■：「モ」か？「シ」か？。一名或は異体字を指す［託（言→魚）］及び「新撰字鏡」の［乍］（草書？類似）の字形に注意する必要があろう。

○【新撰字鏡（天治本）】魚部第八十七（519-6）　＊｛徒郎反。[？]。｝……[？]≒[它]OR［乍］。

○【類聚名義抄(観智院本)】（１）（僧下四）＊｛音唐｝／―魚子｛タコシ｝／／（２）（僧下六）鮝｛音朕、居媛反。フカ。鮝、音象。｝鰧｛月可在。音朕。ヲコジ。｝／／（３）［峡（山→魚）］オコシ。……類聚名義抄（３）の［峡（山→魚）］のツクリは、？とすべき。字形をテキスト化する場合には、オコゼを訓みとする字形の多様を検討し、異種類似形に整理される場合（鱶≒鮝≒鰧／差≒乍→鮓→［唐］）のような可能性を持つことを考慮するべきである。［峡（山→魚）］も、このような類似形の共有関係から、鮫の草行書（崩し字）形がもととなっているのかもしれない。

○【倭名類聚鈔】 （那波道圓本））巻第十九　鱗介部　＊　唐韻云、＊{音唐、漢語抄云、＊魚子、太古之}、魚名也。

○【箋注倭名類聚抄】 〔21〕巻八　龍魚類　＊魚　唐韵云、＊、{音唐、漢語抄云、＊子、太古之、下総本＊子作_二魚子_一、恐非、廣本作_二＊魚子三字_一、按太古之未_レ詳}、魚名也{○唐韻同、玉篇、＊、魚名、孫氏蓋依_レ之、標目魚字下総本無、廣本同、}。

○【倭玉篇（慶長15年版）】下　魚三百四十六（406）　鮓サ。ソ。｛スシ。サメ。カマス。｝／[騰（馬→魚）]トウ｛フカ｝／［魚＋唐］タウ｛ウヲ｝／魳タフ｛ウヲ｝

○参考（１）（オコゼ）：[騰（馬→魚）]：鰧（１０画）で用例を検討する。

○参考（２）（サ＝スシ）：鮓（５画）。鮨（６画）。……『日本語と辞書』第３輯（古辞書研究会編）中の「成簣堂文庫蔵『用心集』箚記其一」（高橋忠彦）５９〜６０p、及び「御伽草子と古辞書」（高橋久子）８４〜８５ｐの「鮓」字の検証と大きなかかわりを持つ。

　［魚＋鬼］

○邦名　ハリセンボン（集覧「水産宝典大日本水産会編」「水産名彙」）。

○【倭玉篇(篇目次第)】第二百八十一魚部(1085-2)　＊｛於鬼切。井反｝

○参考：［魚＋牛］（４画）。

　　［魚＋貢］

○邦名不詳。

　　[魚＋旁]

○邦名　　（1）アブラコ（集覧「水産名彙」）。(2)魴＊＝魴の項参照。

　［魚＋蚤］

○邦名　(1)ミゴイ(集覧｢水産名彙｣)。(2)ニゴイ（同「日本動物図鑑」「水産名彙」）。(3)サヨリ（同「水産俗字解」「水産名彙」）。(4)ナメラ（同「水産名彙」）。（5）ヨリト（同「水産名彙」）。

○【倭名類聚鈔】（那波道圓本）巻第十九　鱗介部　龍魚類二百三十六　＊　文字集略云、＊｛音騒’。漢語抄云、美。｝鯉属也。

○【箋注倭名類聚抄】巻八龍魚部（二十二丁） 　〔46〕［蚤］　文字集略云、［蚤］｛音騒、漢語抄云美、｝｛○今俗 呼美古比、或譌呼爾古比、又呼佐伊、｝鯉属也、｛○山海経西山経云、鳥鼠同穴之山、渭水 出焉、而東流注于河、其中多［蚤］魚、動則其邑有大兵、玉篇、［蚤］、 魚、似[亶]、顧氏蓋依山海経也、説文鯉[亶]也、爾雅舎人注亦曰、鯉一名[亶]、爾雅以鯉[亶]為一物、與郭氏不同、阮氏蓋从是説、故以状如[亶]魚之［蚤］為鯉属 也、然舎人為[亶]即鯉、郭注為[亶]黄魚、其説不一定、且山海経云、動則有大兵、是非俗所謂美古比明矣、依文字集略謂之鯉属、源君訓美、非是、開宝本草云、白魚、大者六七尺、 色白頭昂、生江湖中、李時珍曰、[白]形窄腹扁鱗細、頭尾倶向上、肉中有細刺、武王白魚入舟即是魚、可以充之、｝　

○【箋注倭名類聚抄】巻八龍魚部 〔61〕　[白]魚　文字集略云、[白]｛音白 、漢語抄云之侶乎、｝｛○今俗呼之呂宇乎、或云之良宇乎、｝魚薄身、白色也、｛○按説文 、[白]、海魚也、廣雅、[白]、［喬］也、其物未詳、文字集略白當此物、又有白魚、形状詳[蚤]條、又、非之呂乎、漢語抄以為之侶乎誤、」又按本草綱目 、鱠殘魚出蘇松浙江、大者長四五寸、身圓如筋、潔白如銀、無鱗、若已鱠之魚、但目有両黒点爾、彼人最重小者、曝乾以貨四方、清明前有子、食之甚美、清明後子出而痩、但可作酢腊 耳、是可以充之侶乎也、}

○【類聚名義抄（観智院本）】僧下四　＊｛音騒。ミ。鯉属。｝

○参考（１）コイ系：〔鯉〕（７画）。

○参考 （２）チョウザメ系：[魚＋亶]（１２画）。

○参考（３）シラウオ（シロウオ）系：[白]（５画）。[魚＋喬]（12画）。←（ミゴイ・ニゴイ）

　　[魚＋隻]

○邦名　用例不詳。

　［魚＋卯／田］［魚＋留］　JIS第２水準[8263]

○邦名　ボラ。　（1）ナヨシ･ハラブト（集覧「水産俗字解」「水産名彙」）。（2）ボラ（集覧「岩波動物学辞典」「実験活用水産宝典」「水産俗字解」「水産名彙」）。（3）イナ･クチメ･コチ（同「水産名彙」）。（4）鰡魚＝サメ（同「水産俗字解」「水産名彙」）。（5）鰡［魚＋少］＝ツノジ（同「水産名彙」）。

○【下学集(元和3年板)】＊2　ナヨシ{或ハ作ス名宜ナヨシト}

○参照 ：鯔（46208）〔0804〕に用例を記す。

　［魚＋怨（心→田）］［魚＋留’］

○邦名　1016＊1＊2に同じ。本字形の用例は不詳。

　［魚＋鬲’］[膈’（月→魚）]

○参考

○音符「鬲」（カク・レキ）は、３本足の鼎（かなえ）の象形。冏はまったく別のグループの字だが、もともとの字形「メ」をルに置き換えた「鬲」が使われてきた。隔てるという字の旧字体には、ちゃんとメが含んでいたのだが、常用漢字に含むとき、新字体として、それも消えてしまった。ギギにあてられる漢字の字形の中にはなぜか「メ」が多く含まれるのは、じつに興味のあることなのだ。メが含まれなくなった鬲には、ギギの持つ人を螫すパワーが消え去ったかのようなきさえする。「メ」（或いは「×（バツ）」）の持つ意味を考えてみるのもひとつのテーマとなりうる。

○邦名　ギギ。集覧に載せず。用例不詳。

○参考（１）ギギ：［軋（車→魚）］（1画）。[貔（豸→魚）]（10画）。[蠖（虫→魚）]（14画）。　

○参考（２）ウナギ：［鰻］（１１画）。

　[魚＋馬]

○邦名　(1)スバシリ（集覧「日本動物図鑑」）。(2)ツクラ・ナヨシノコ・マグロ(同｢水産俗字解｣｢水産名彙｣)。(3)シビ（同「水産名彙」）。(4)＊駮＝サワラ(同｢水産俗字解｣｢水産名彙｣)、マグロ・シビ（同「水産名彙」）。(5)＊[魚＋先]＝スバシリ（同「日本動物図鑑」）。

○【新撰字鏡(天治本)】魚部第八十七（５２０―４）　＊1＊2｛同作。側持反。｝／小学篇字…鯐｛豆■（之）良｝

○【倭名類聚鈔】巻第十九　鱗介部　龍魚類二百三十六　[馬]　唐韻云、[馬]魚｛音馬。弁色立成云、都久良。｝魚名也。

○【箋注倭名類聚抄】巻八龍魚部 〔36〕　[馬]　唐韵云、[馬]、｛音馬 、弁色立成云、都久良、｝｛○新撰字鏡［走］同訓、伊勢俗鯔之小呼者都久良、此條又次鯔魚、則知都久良之為小鯔魚也、東俗呼須波之利、｝魚名也、｛○廣韻同 、玉篇[馬]、魚名、孫氏依之、按[馬]、 不設形状、其物未詳、｝

○参考（ボラ）：[鯔]（8画）。

　[魚＋時]

○邦名　(1)イワシ・エソ・ハマチ(集覧｢水産俗字解｣｢水産名彙｣)。(2)ハス（同「日本動物図鑑」「岩波動物学辞典」「分類水産動物図説」「水産俗字解」「水産名彙」）。(3)オムラ・ヒラ・ハリマチ「水産名彙」「水産宝典大日本水産会編」。(4)＊魚＝スウユウ（同「有用有害鑑賞水産動植物図説」）。(5)ボラ（同「水産宝典大日本水産会編」）。(6)＊舅＝ボラ（同「水産名彙」）。

○【倭名類聚鈔】巻第十九　鱗介部　＊　唐韻云、＊{音時。漢語抄云、波曽。}、魚名也。似魴肥美。江東四月有之。……原文では、「肥[美（大→火）]」。「肥美」。

○【箋注倭名類聚抄】 （〔47〕）巻八龍魚部　＊　唐韵云、＊、{音時、漢語抄云波曾、}｛○今俗呼_二波須_一、小野氏曰、雑字簿金鎗魚即是、｝魚名也 、似_レ魴肥美、江東四月有_レ之 、｛○廣韻同、按爾雅［咎］當［互］、郭注、海魚也、似_レ［扁］而大鱗、肥美多［更］、今江東呼_二其最大長三尺者_一為當［互］、邵晉涵曰、如_二郭氏所_レ説形状_一、即後世所_レ謂［時］魚也、今［時］魚似_レ［方］而長、色白味腴、肉多_二細刺_一、小野氏曰、［時］魚俗名比良、一名比良鰶、安芸謂_レ之比良古、大坂謂_レ之黄豆奈之。｝

○【本草綱目啓蒙】（東洋文庫４冊）（3-200）（巻之四十、鱗之三、魚類）[時]魚：ヒラ　ヒラコノシロ　ウミヒラメ｛芸州｝　ヒラゴ｛備前、子｝　キヅナシ｛大坂、同上｝　一名[咎]｛爾雅｝　当[互]｛説文｝　時充｛水族加恩簿｝　珍曹必用郎中｛同上｝　箭魚｛典籍便覧｝　詶[制]魚｛閩書｝　惜鱗魚｛余姚県志｝　青鱗｛福州府志｝　三[犂（牛→魚）]之魚｛彙苑詳註｝　三[犂（牛→魚）]（広東新語）　[犂（牛→魚）]（正字通）　[利／魚]　[犛（牛→魚）]　[犛（牛→魚）]’　[來]　[黎]　鮊｛共ニ同上｝／海産ナリ。形鰶魚（コノシロ）ニ似テ大。渾身白色ニシテ、鱗ハ梅花弁ノゴトシ。唐山ニテハ婦女ノ花鈿トスト云。腹下ノ鱗三角ニシテ鰶魚ノゴトシ。大ナルモノハ長サ二三尺、身ハ扁薄ニシテ肉細刺多シ。腹中ノ刺ハ箭鏃（ヤジリ）ノ状アリ。故に箭魚ト名ク。

○【毛吹草（岩波文庫版）】巻第四　近江　東山道　湖ミズウミニ水鮭アメ、鱒マス、鯰ナマヅ、[時]ハス、[歳]ウグイ、ワタカ、鯉コイ、似鯉ニゴイ―以下略。

○参考（１）ハス：［魚＋互］（４画）。［魚＋咎］（８画）。

○参考（２）ホウ：[方]（４画）。

○参考（３）�@和（コノシロ）＝[鮗]（5画）。�Aヒラコノシロ[時]（10画）：[魚＋各]（6画）。[魚＋列]（6画）。[魚＋奈]（8画）。[制／魚]（8画）。[魚＋制]（8画）。[咎]（8画）。[利／魚]（7画）。[犂(牛→魚)]（８画）。[時]（10画）。[魚＋祭]（11画）。[犛（牛→魚）]＝[〈未攵〉/〈厘（里→魚）〉]（11画）。［曹］（11画）。

　[魚＋貔−豸][貔（豸→魚）]

○邦名　ギギ（「本朝食鑑」）。

○【本朝食鑑】（古事類苑よりMANA抄訳）巻の七　鱗部之一（河湖無鱗類八種）　＊{音は皮。[魚＋比]と同じである。俗に岐岐（キキ・ギギ）と訓む。}。集解。＊は渓澗や田水の間に生息し、状は、加志加魚の類（なかま）であり、鬚があって、背は黒く、黄赤色を帯び、頭が大きく、口は濶（ひろ）くあき、その尾には小さく岐（ふたまた）にわかれていて、背の上の[髭（此→耆）]（セビレ）には刺があり、人を螫（さ）す。大きいものは尺（約30センチ）に及び、声を出すさまは、蛙の如し。俚語に、人が捕らえると「吾喜吾喜」と哀れで悲しそうな声を発する。また、俚語では、岐岐（キキ→ギギ）といい、肉の味は、[魚＋罔][魚＋末]の味には及ばない。野の人はこれを食べる。（1348ページ）

○【本朝食鑑】(古事類苑よりMANA抄訳)　巻の十　華和異同　鱗介部　＊　本草（「本草綱目」）に載る「杜父魚」である。渡父（トフ）に当て作る。渡父（「渡し守」と東洋文庫版の島田勇雄は訳を与えている。ワタシモリ、よい言葉である。これ以上の訳語は見当たらない。）は、渓澗で採り、食する。また「船[石＋丁]魚」（センテイギョ）ともいう。人を見ると、喙（クチサキ）を泥中につきして隠れようとするさまが、船の碇の如くであることから名づけた名前である。時珍は（本草綱目の中で）、「渓澗に生き、長さは２、３寸、その姿（状）は、吹沙（スイサ＝ハゼの仲間。ゴリやイシブシのような魚、あるいは、カジカの仲間であるとも考えられる。前記島田訳では「スナクグリ」、『和漢三才図会』では「吹沙」に対して、ジンゾク、カナビシヤ。考察は別記する。）のようで、短く、尾ひれは岐（わかれ）ていて、大きな頭に、広い口（濶口）をしている。その色は、黄黒で斑（点）があり、背の上の[髭（此→耆）]（セビレ）には刺があり、人を螫す。」と書いている。これは、即ち、わが国（本朝）の〈渓澗乃＊〉である。＊は、[魚＋比]に似ているが、[魚＋旁][魚＋比]、鯆[魚＋比]の[魚＋比]のことではない。呉任臣の『続字彙補』という字書によれば、「[魚＋比]」魚には、尾に毒がある」とあり、『太平御覧』には山海経を引用して「懸[雍／瓦]の山から晋水が流れて、その中に[魚＋比]魚が多くいる。その声（音）は叱るような音だ」とある。これは、また、「渡父」のことであろうか。……太平御覧が引用する山海経に載る[魚＋比]魚は、「比」は誤りで、「此」が正しいと思われる。

○参考：[魚＋此]或は、[此／魚]「シギョ」を見られたい。

○参考 （１）ギギ・カラカコ系：[桑＋頁]（sonota19画）：［軋（車→魚）］（1画）。［魚＋果］（８画）［魚＋雨］（8画）。[魚＋罔]（8画）。[鯤]（8画）。［魚＋禺］（9画）。［魚＋毘］（9画）。[魚＋鬲（ル→メ）]（１０画）。[貔（豸→魚）]（10画）。[蠖（虫→魚）]（14画）。[嘗]（１４画）／[黄]（sonota12画）。[桑＋頁]（sonota19画）。〈参考：［魚＋廷］(７画)。[魚＋亭](９画)〉

○参考（ ２）ハゼ・カジカ 系：　鯊・沙魚（７画）：[鮖]（５画）。［魚＋罔］（0886）。[魚＋庸]（46460）〔1146〕。［魚＋同］（46121）〔0630〕。 杜父魚（その他７画）。渡父魚

　　ギョ[虔（文→魚）＋攵]

○邦名　不詳。ギョ。スナドル。魚を採捕すること。

○検討は漁（7-18101）で示した。

　[魚＋師][鰤]

○邦名　ブリ。カマス。（1）ブリ(集覧「岩波動物学辞典」｢水産俗字解｣｢水産名彙｣)。（2）カマス（同「水産名彙」）。

○参考：ぶり：鰤（１０画）：［魚＋反］（４画）。海［連］（１１画）。

　　[鰥]

1302-46520 ＊2 （再掲）

0534-46065 鰥の古字 （再掲）＊3

0947-46335 鰥の譌字 （再掲）＊4

○邦名　(1)ヤモオ（鰥夫）。妻のいない男。妻に先立たれた夫。おとこやもめ。(2)＊4＝ヤマメ・ヤモメ(集覧｢水産名彙｣)。

○寡（やもめ）と鰥（やもお）の象形について……「鳥形の霊とし化した魂は、それを念ずることによって招くことができたらしい。未亡人のことを寡というのは、麻の喪飾りを頭につけた女が、廟中で亡き夫をしのんでいる姿である。その人の姿は、憂いにみたされている。その憂いに沈む人の後に、よりそうように隹の字を添えた字形がある。これもおそらく寡と同じ意味であろうが、その隹は、亡き夫の亡霊をしるしたものにちがいない。女が先に没すると、男のやもめを鰥かんという。魚の上に［鰥−魚］なみだをそそいでいる形であるが、魚はのちにいうように、女性の象徴とされるものである。」（『中国古代の民俗』白川静著。３８ページ。）〔上の画像1302-1＝鰥の象形（金文）『漢語林』より。〕

○古辞書「鰥」字体例

○【新撰字鏡(天治本)】巻九魚部第八十七　＊₃＊₄　{同作。古元反。男也毛女。}……２字同じく作る。ko-ganの反切、kan（カン）。オトコヤモメと訓む。

○【倭名類聚鈔】巻第二男女類第一八　＊10〔鰥夫〕　釈名云、無妻曰。＊11、古頑反、{和名夜無乎}。言鰥鰥然不寐如魚目恒不閉者。……鰥夫。　釈名に妻無きを云う、とある。＊11、ko-ganの反切（kan）にして、和名はヤムオ。「鰥鰥」は、魚の目がまばたき一つせず恒にあるように目が冴えて眠れないことをいう。訓みは「カンカン」。＊10と＊11の鰥の字を使い分けているのは、筆使いの趣向か、釈名の原文引用上のものか。用例の見本としては参考になる。

○【類聚名義抄(観智院本)】僧下四　＊5{音關。ヤモヲ。大魚。}　　＊6＊7{通正。音關。ヤモメ。ヒトリウト。}　　＊8＊9{同}。

○＊3、＊5、＊6、＊11＝[環−王]をツクリとする＊2。

○＊4、＊7、＊10（上字）＝鰥。

○問題は、画像1302-４の２字。＊８＝衆をツクリとする字形。＊9＝罪をツクリとする字形。『類聚名義抄』(観智院本)の僧下四の５行目に１行を使い字形のバリエーションを紹介しているなかで、最後の２字として前３字とは区別してあげている字形だが、「同」を「上３字に同じ」とよめば、この２字の音は「關」で、「カン」であるはずだが、「衆」「罪」は、同じアミガシラの字形だが、音はSあるいはZの子音を含む系統を異にする文字。おそらく、「衆」はアミガシラの下の「人＋人＋人」の字形が「環−王」のアミガシラの下の部分の崩し字体と類似することからの、「カン」の音を借りてきたいわば当て字であろう。「罪」も、「鰥−魚」のアミガシラの下の部分の字形に類似することもそうだが、「ヤオモ」が、なんとなく「ツミ」ぶかいとまではいえないが、後ろめたいような、そんな意味も含まれての当て字である可能性もある。いずれにしても、「類聚名義抄」以外の用例が見つかるまでは、題字として採用することはペンディングとしておきたい。

○参考：［罠（民→魚）］（5角）。［魚＋罪’］（12画）。［魚＋衆’］（12画）。［魚＋〔環−王〕］（13画）

　　[魚＋茲]

○邦名　 （１）ボラ・ナヨシ・クチメ（集覧「水産名彙」）。 （２）ハヤ。

○【類聚名義抄（観智院本）】僧下一二（1212-2）　＊｛音茲。［魚＋囚］｝

○参考(１）ハエ・ハヤ：［鮠］（６画） に字形用例を総括して載せる。：［魚＋也］（３角）。［魚＋囚］（５画）。［魚＋由］（５画）。[攸／魚]（７角）。［魚＋走］（７角）。［魚＋若’］（９画）。［魚＋夏］（10画）。［魚＋條］（１１画）。［魚＋異］（11画）。［魚＋輩］（１５画）。

○参考（２）ボラ系：

○

○

　[魚＋晏]

○ナマズ。

　　［騰（馬→魚）］[月＋券（刀→魚）]

	1029 ―― ＊1	（46387）　（一）ト_ウ・ド_ウ。（二）チン・ヂン。　（一）（二）をこぜ。海魚の一。或は［滕（月→魚）］（46418）（11画）に作る。
	〔1226〕 ―― ＊2	（46497）（１２画）　ト_ウ。　＊1＝（46387）〔1029〕の本字。

（17画） ―― 〔1710〕＊3

（14画） ―― 〔1421〕＊4

（10画） ―― 〔1010〕＊５

○邦名　オコゼ。(1)オコゼ(集覧｢水産名彙｣)。(2)＊1魚＝アイナメ（集覧「大日本水産会編水産宝典」「水産名彙」）、アメ・サケ（同「水産俗字解」「水産名彙」）、アメノウオ・ミズサケ（同「水産名彙」）。(3)＊1[＊1−月]＝フカ（同「水産俗字解」「水産名彙」）。

○中国においては、草のような蒼い色をして尾が赤い魚。また、ケイ［魚＋厥］に似るとする。これは、中国の想像の世界と動植物を描いた古代地理書である『山海経』の中山経の７の巻中に記されている。

○【山海経箋疏】（郭璞伝／郝懿行箋疏。還読樓校刊本）第五中山経（5-7-8）又東七十里、曰半石之山、其上有草焉、生而秀、其高丈餘、赤葉赤華、華而不實_(d)1、其名曰嘉榮、服之者不霆_(d)2。來需之水出于其陽、而西流注于伊水、其中多[侖]魚_(d)3、黒文、其状如鮒、食之不睡。合水出于其陰、而北流注于洛、多鰧魚_(d)4、状如[厥]、居逵_(d)5、蒼文赤尾、食者不癰、可以爲瘻_(d)6。

《郭璞注（d）》｛郝懿行案｝

(d)1　初生先作穗、却著葉、花生穗間。

(d)2　不畏雷霆霹靂也。音廷搏之廷。

(d)3　音倫。

(d)4　音騰。｛懿行案。玉篇云。鰧魚似[市]蒼文赤尾。郭氏江賦作[滕(月→魚)]、李善注、引此注云、[滕(月→魚)]音滕。｝

(d)5　[厥]魚大口、大目、細鱗、有班彩。逵、水中之穴道交通者。[厥]音[劌]。 ｛懿行案。爾雅云。[厥][帚]、注云、小魚也。似鮒子而黒。初学記魚下引此經云。[厥]魚大口而細鱗有斑彩、蓋引郭注誤作経文也。如[厥]、玉篇作似[市]｝

(d)6　瘻、癰屬也。中多有蟲。淮南子曰、[奚隹]頭已瘻。音漏。

○【山海経】第五中山経　合水が山の北より流れて北流し、洛に注ぐ。＊1とう魚（名）が多く、状は［魚＋厥］けい（名）の如く、水中の穴に住む。蒼い文、赤い尾、食うものは癰ようをわずらわず、瘻ろう（くびのはれもの）をなおすによろし。（平凡社ライブラリー『山海経　中国古代の神話世界』高馬三良訳。９５ページ。）……「癰よう」は、「悪性のできもの。首すじや背中、顔などにできる。」（漢語林）、「瘻ろう」も「首にはれものができる病気」（同）とある。

○【太平御覧】（国会図書館蔵）第九百三十八鱗介部十：虎魚：范氏曰、虎魚出東海。／郭璞江賦曰、或虎状類人｛虎魚頭似虎、腹背皆百刺。｝

○【倭名類聚鈔】巻第十九　鱗介部　龍魚類二百三十六　＊2魚　唐韻云。＊2｛直稔反。與朕同。漢語抄云。乎古之。｝魚名似鰕而赤文。

○【箋注倭名類聚抄】巻八龍魚部　鰧　唐韵云 、鰧｛直稔反。與_レ朕同 、漢語抄云、乎古之、｝｛○新撰字鏡［工］乎己自、今俗乎古世、｝魚名、似_レ鰕而赤文、｛廣韻同、廣本、鰧作_レ＊2、按鰧従_レ（＠1） 、説文作_レ（＠2） 、隷省作_レ＠1、故或作_レ＊2、或 作_レ＊1、玉篇 、＊1、大曾切、魚似_レ［市］、蒼文赤尾 、廣韻＊1直念反、音義皆不_レ同、 並其者未_レ詳、 嶧山君曰、雑字簿所_レ載虎魚、可_三以充_二乎古世_一也、下総本 作_レ＊3、 恐俗字、｝

○【節用集（橋本経亮旧蔵本）】（京都大学電子図書館貴重書画像）第１巻［遠］（ヲ）畜類　［唐］ヲコセ、＊４。……橋本経亮旧蔵本節用集は、「永禄八年よりは後であるけれども…中略…之を距ること余り遠くない時代」（『古本節用集の研究』上田万年・橋本進吉著。51〜52ｐ）成立とされる。永禄八年＝１５６５年。京都大学蔵本は、同研究による分類では、「印度本系」第２類「永禄２年本」類に属する。

○【節用集（易林本）】（日本古典全集刊行会板）　ヲ／気形（きけい）鰧魚ヲコシ。……慶長２年（１５９７）に易林が校注 刊行。

○【合類節用集】（延宝八年・１６８０年本：国会図書館亀田文庫蔵）五巻龍魚部／ヲ／＊2魚オコジ（左ルビ：チン）｛順和名｝鰧魚ヲコゼ／同（左ルビ：チン）[魚＋莘]ヲカジ（左ルビ：シン）……[魚＋莘]（１１画）（草冠４画）音シンの字がなぜオコゼに続く字に現れたのか？

○【書言字考節用集】（享保２年版：増補合類大節用集―元禄１１・1698年初版刊行）鰧魚ヲコジ《左ルビ：ヲコゼ》

○【童訓集　下】（万治２年初版、寛文１２年再刊。小泉吉永氏所蔵本）　鰧魚をこじ｛をこぜとは かたことなる虫を

節用集 （京大DB橋本経亮旧蔵本）
書言字考節用集（享保２年版）	童訓集下	難字往来

　いへり、順の和名ニ乎古之ヲコジ｝＊4……印度本節用集及び饅頭屋本節用集（伊勢本系）に＊４（［魚＋〈天／鬼〉］）が載る。「童訓集」は、イロハ分類の字書（字尽）タイプの往来物。３巻３冊で、魚貝は、下巻「鳥獣貝魚之事」として魚貝字を含む。付訓、所々に割注として中国原典や和名抄を引用した名称由来、和俗を記す。作者不明・江戸-西村又右衛門板。図像二行目最後の字は、［天／鬼］（＊4）のように読めるが、『日本魚名集覧』漢字魚名表中２５画（魚偏１１画＋ツクリ１４画）に、「実験活用水産宝典」「水産俗字解」「水産名彙」 は、「節用集」を引いて、［天／鬼］をあげている。

　　　オコゼの一般的な字形である［滕（月→魚）］あるいは［騰（馬→魚）］の草書体の字形から書き写す際に、月偏を魚偏に、騰（馬→魚）の魚を鬼に読み間違えたか、趣向でおきかえて作った字形という想像は成り立つが、用例をもう少し増やして検討してみたい。ただし、このような字形を、一や二の字形用例のみを見て、「国字」として無批判に“活字化”することには、MANAは反対である。不明字として、草書体のバリエーションとしてみるか、元字の文献からの書き写しによって筆記したものであるかの、検証をしてかかることが必要であるように思う。オニオコゼという和名があるが、近世にこの和名が一般化していたかどうか、あるいは、オコゼの姿態から、「鬼」を字形に書き入れる趣向をしたにしても、１字の用例をもって造字として扱うことはさけるべきであり、［騰（馬→魚）］の変化形として、参考字に止めるべきであろうと考える。「難字往来」6-002-02-3（10）にも見える。

○【水族志】（文政１０年序記KLBD）（167）ヲコゼ｛「雑字簿」曰、虎魚「ヲコゼ」｝ツチヲコゼ｛紀州日高郡網代浦｝虎魚。／「続脩台湾府志」曰、虎魚状似虎頭巨口無鱗、長サ尺ニ盈タズ、肉嫩クシテ美シ。「ヲコゼ」は形状「ムシマ」ニ似テ上唇鼻ノ處高ク、鼻ヨリ頭ノ間凹ニシテ、眼上高ク起リ、其起レル所ニ眼アリ。色黄ニシテ瞳黒色、頭ニハ棘ナシ。舌白色ニシテ、藍色の点アリ。肉ト皮ト相離レリ。皮深黒白斑アリ。背ニ朱点アリ。背鬣ノ刺長ク腰上背ノ跡鰭アリ。脇翅、腹鰭、糞穴後ニ鰭倶ニ刺ヲ皮囊ニ包メルカコトシ。其色淡黒、脇翅ハ末朱色、本黒白斑アリ、尾岐ナク、黒色、其刺ニテ人ヲ螫スハ痛ムコト甚シ。一種丹色ノ者アリ、又紫紅斑ノ者アリ。／（１６８）ハナヲコゼ　以下略。

○【日本魚名の研究（平凡社「渋沢敬三著作集」第２巻）】「オコゼについて」「オコゼの実体」より（146p〜148p）オコゼ類の代表種は和学名でいわゆるオニオコゼ（Inimicus japonicus Cuvier & Valenciennes）で、一般に単にオコゼといわれている。…中略…オニオコゼの類は一般にオコゼと呼ばれるとともに、多くの場合他のオコゼ類のごとく複名を持たない。すなわち、魚名「オコゼ」の基本型と見なし得る。わが国最古の辞典たる『新撰字鏡』及び『和名抄』にオコシまたはオコジとしてタイ、サケ、カツオ、エイ、カマツカ等四十種ほどの魚名とともに採録されているものはけだしこのオコゼであろう。この推定を破るべき証左なき限り、オコゼは多少の音韻変化はあるとしても一応一次的魚名としてまた永年持続せる優勢魚名としてみとめらるべきである。…中略…

　　　ちなみに本来の魚名オコゼの文献上の出現を見るに、ほとんどすべて一定魚類を指すと同時にその主名であって、複名としては現れてこない。今僅少ながら元禄八年の『本朝食鑑』以前における上記以外の文献的出現を瞥見するに、平安朝時代の字書たる『伊呂波字類抄』（自天養至治承年間作）に「鰧　オコシ」とあり、下って建治元年（一二七五年）沙門経尊から金沢実時に進献された『名語記』に「山神ノ見テヨロコブナルオコシ如何云々」とあり（＃106）、更に文安（元年は一四四四年）年中作の『アイ嚢抄』には「鰧」字にアメと訓じているのみでオコゼは直接現われない。室町時代以後にできた易林本『節用集』には「鰧魚　オコシ」と出ている。また慶安三年安原貞室の著わした方言集『かたこと』には「鰧　オコジ」をオコゼという由が記されてある。かかる字書類または日記類等を更に渉猟したら事例はますます多きを加うるであろう。

　　　オコゼの形態学的記載は諸種の専門書に詳記されているので省略するが、これを要するに、毒棘を持つことと醜貌なることはオコゼの特に有する自然的特殊属性である。この属性が魚名オコゼに特別の意義を持たし、ついに他の魚種その他にして相似的属性を有するものに援用されまたは主として複名として出現せしめたものと思われる。

　　　（２　オコゼと他の魚類）基本的魚名としてのオコゼは上記属性の優勢によって他種魚の複名として援用される場合を見る。カサゴ科、カジカ科、イザリウオ科、ミシマオコゼ科、ドンコ科、ギギ科等にわたり約三十種弱の海産ならびに淡水産の魚類が、時により地方によりオコゼなる魚名を持つこと第一表（略）のごとくである。

○参考（１）（オコゼ）：［魚＋唐］（１０画）。［魚＋天／鬼］（14画） 。

○参考（２）（スシ）：鮓（５画）：『日本語と辞書』第３輯（古辞書研究会編）中の「成簣堂文庫蔵『用心集』箚記其一」（高橋忠彦）５９〜６０p、及び「御伽草子と古辞書」（高橋久子）８４〜８５ｐの「鮓」字の検証と大きなかかわりを持つ。

　　［榻（木→魚）］

○邦名　不詳。 （ヒラメ。カレイ。）

○【類聚名義抄(観智院本)】僧下一〇　＊{他臘切。}

○【倭玉篇(夢梅本・篇目次第)】（1083）＊{ケフ反}

○参考（１）ヒラメ系。カレイ系。＝鰈（46322）（９画）。［魚＋去］（５画）。［魚＋〈合／羽〉］(12画)

○参考（２）イカ系＝[魚＋月]（４画）。[魚＋羽]（６画）。［魚＋〈合／羽〉］(12画)

　［魚＋納］

○邦名　アユ。 エイ。

○【本草和名（寛政刊・古典全集本）】韶陽魚　一名[納]｛奴答反｝、一名［番］{［番］是[昆]之名、朝出求食、夕還入母腹中者曰［番］、音閉晏反。}、[甫]魚{夫禹反、出崔禹.}、和名古女。

【新撰字鏡（享和本）】

○【新撰字鏡(天治本)】巻九魚部第八十七（517）　＊{奴容’反。◆敞字也。无甲、有尾、无足。}……无は無で、無いの意味の字。読みは次の通り。 ヌ−ヨウの反。◆の字が読めない。下記【字鏡集（寛元本）】[納]に記したように、「竹」のような字だが、次の「敞」が明らかだから、説文を引用したとして、たぶん、「似」の 崩し字と読んでよいだろう。とすれば、「敞」＝「鼈」に似て、甲無く、尾有り、足無し、となる。

○【字鏡集（寛元本）】巻三、十四魚部（影印篇377〜388p）　[納]｛奴合反。竹鼈无甲有尾無足｝

○【類聚名義抄(観智院本)】僧下一〇　＊{音納。魚似鼈。}

○【倭玉篇(慶長15年版)】下　魚三百四十六（408）　＊ダウ。ナウ。{アイ。}……大辞典の邦字「あゆ」は、この、「アイ」からの訓みだろう。

○【箋注記載項】〔42〕邵陽魚。

○参考（１）エイ系：[魚＋覃]（１２画）。韶陽魚（その他１４画）。鼈（黽→魚）：鱉（１２画）。［番］（１２画）。

　　[謠（言→魚）]　

○邦名　（1)アゴ・トビウオ（集覧「水産名彙」）。（2）エイ（同「日本動物図鑑」）。（3）イクイ（同「水産俗字解」）。（4）文鰩魚＝ウミホウボウ（同「水産俗字解」「水産名彙」）、トビウオ（同「日本動物図鑑」「岩波動物学辞典」「水産俗字解」「水産名彙」）、トビエイ・アゴ（同「水産名彙」）。

○ツクリ［謠−言］の新字体は、［謡−言］。

○【新撰字鏡(天治本)】魚部第八十七　　＊2{要遥反。平。有翼能飛}。／小学篇　[魚＋要]{止比宇}。

○【新撰字鏡(群書類従本)】魚部七十一　[魚＋要]{止比乎}。

○【倭名類聚鈔】（那波道圓本）巻第十九　鱗介部　鰩　陸詞切韻云 、鰩｛音遥、和名止比乎｝魚之鳥翼能飛也。

○【箋注倭名類聚抄】巻八龍魚部（372上段）　鰩　　陸詞切韵云、鰩｛音遙、度比乎、｝｛○新撰字鏡、[要]止比乎、｝魚之鳥翼能飛也、｛○廣韻云、鰩、文鰩魚、鳥翼能飛、白首赤喙、常 遊_二西海_一、夜飛向_二北海_一、按西山経云 、泰器之山観水焉、西流注_二于流沙_一、是多_二文鰩魚_一、状如_二鯉魚_一、魚身而鳥翼、蒼文而白首赤喙、常行_二西海_一、遊_二於東海_一、以_レ夜飛、陸氏蓋本_二於此_一、證類本草引_二陳蔵器云_一、文鰩出_二南海_一、大者長尺許、有_レ翅與_レ尾斉、一名飛魚、羣_二飛水上_一、海人候_レ之当_レ有_二大風_一、呉都賦云、文鰩夜飛而触_レ網、是也、説文無_二鰩字_一、依_レ云_下常行_二西海_一遊_中於東海_上、則古蓋用_二遙字_一、｝

○【類聚名義抄(観智院本)】僧下五　　＊、＊２、＊３、俗今正、音遥、トビヲ。

○【下学集（元和３年板）】　＊2　トヒウヲ。

○【節用集(易林本)】文＊魚　トビウヲ。

○【倭玉篇(夢梅本・篇目次第)】第二百八十一　魚部　＊{与照切。エウ反。}

○【倭玉篇(慶長15年版)】下　魚三百四十六　＊２ヨウ　トビウヲ。

○【和漢三才図会】（島田勇雄他訳本・東洋文庫471・第7冊）（221ページより）　文＊1　トビイヲ／ヒイゴ／ウエンヤ・ウ　音は姚。［魚＋飛］｛音は飛ヒ｝。飛魚。俗に止比魚。また比以古という。―以下略―。

○【物類称呼】巻之二　動物　文＊魚　とびうを○中国及九国しうにて○あごといふ／婦人臨産ふじんりんざんの月是を帯れば産みやすしとみえたり／今又乳のたるゝ薬なりとて婦女は珍重する也。

○【重修本草綱目啓蒙】（古事類苑・動物部１５３３ページより）三十無鱗魚　文＊1魚　トビヲ｛和名鈔｝／トビウヲ／アゴ｛筑前｝／ツバクラウヲ｛長州｝／ツバメウヲ｛石州｝／一名＊1魚｛典籍便覧｝／五色魚｛同上｝／［魚＋飛］｛正字通。俗字。｝／［魚＋非］｛同上。｝―中略―形ヲコゼニ似テ長サ尺許、紅色ニシテ横ニ赤黒色ノ虎斑密ニアリ、両鰭濶長ニシテ斑アリ、能海上ヲ飛ブ、死スル時ハ紅色消尽ス、是ビン書ニ、飛魚頭大尾小、有翅善跳、福人名緋魚、以其色紅如緋ト云フモノナリ。

○【山海経】第二西山経〔文＊魚ブンヨウギョ〕　さらに西へ百八十里、泰器の出といい、観かん水ながれ西流して流砂に注ぐ。ここには文あやある＊よう魚が多い。状は鯉の如く、魚身であって鳥の翼つばさをもち、蒼あおい文あやがあって白い首、赤い喙くちさき、つねに西海に出かけては、また東海に遊び、夜に飛ぶ。その声は鸞[奚＋隹]らんけい（ほうおうのなかま）のよう。その味は、酸甘あまずっぱく、これを食うと狂いをいやす。これが現れると天下は大いにみのる。（高馬三良訳「平凡社ライブラリー」38ページ。）

○参考 （１）トビウオ系：［魚＋文］（4画）。文＊魚（その他4画「文」）。［鯡］（８画）。［飛］（9画）。

○参考（２）エイ系：[魚＋覃]（１２画）。韶陽魚（その他１４画）。鼈（黽→魚）：鱉（１２画）。[魚＋納]（１０画）

　[魚＋差]

○邦名　すし。(1)コチ（集覧「日本動物図鑑」「岩波動物学辞典」）。(2)ムツ（同「水産俗字解」「水産名彙」）(2)コノシロ・ツナシ・ロクノウオ（集覧「水産名彙」）。(3)＊魚＝コノシロ（同「水産俗字解」「水産名彙」）。

　[差／魚]

○邦名　すし。魚名としての用例不詳。

○【新撰字鏡（天治本）】魚部第八十七（518）　＊｛庄［暇（日→古）］反。蔵魚也。［魚＋今］也。｝

○参考：［差(エ→魚)］（46156）（７画）及び鮨（６画）に用例検証を載せる。

　［魚＋豈］

○

　［魚＋骨］

○邦名　コチ(集覧｢水産俗字解｣｢水産名彙｣)。

　[魚＋格]

○邦名　不詳。

○【倭玉篇(篇目次第)】　＊{更白切。カク反。}

　［魚＋盍］

○邦名　（1）タナゴ(集覧｢水産俗字解｣｢水産名彙｣)。(2)マナガツオ。

　[魚＋容]

○邦名　(1)フグ･フクベ(集覧｢水産名彙｣)。(2)コノシロ。

　[魚＋脊]

＠＝（46593）（1511）

○邦名　(1)＊魚＝フナ（集覧「水産俗字解」）　

○参考字形＝フナ（鮒）。

　［魚＋虔］

○邦名　(1)ウミゴイ(集覧｢水産俗字解｣｢水産名彙｣)。(2)コイ(同｢水産俗字解｣)。(3)＊[魚＋薄]＝コイ・マゴイ(同｢水産名彙｣)。

○参考（コイ）：［鯉］（７画）：[后]（６画）。[果]（８画）。［魚＋度］（ ９画）。［虔］（１０画）。[魚＋裏]（13画）。 ：参考：鮠（６画）。[呉]（６画）。[蒦]＝[草（早→隻）]（１４画） 。

○【箋注記載項】〔44〕鯉魚。

　[魚＋耆][鰭]

○邦名　魚のひれ。(1)ウルメイワシ・エイ（集覧「水産名彙」）。(2)鰭白＝ハタシロ・マハタ（同「水産名彙」）。(3)鰭白魚＝コショウウオ（同「水産名彙」）。

新撰字鏡（天治本）（520p）より。頭注★［二/日］―時・骨（又）	同左より。 ［二/月］＊2 ［二/ト］＊3	類聚名義抄（観智院本）僧下三より。 ○上の字より＊4、＊5、＊1	【干禄字書】上聲

○【新撰字鏡(天治本)】魚部第八十七　鰭{渠［二/月］反。魚脊上骨。伊呂’已。}／［二/月］｛渠［月＋二/月］反。鮓。｝／［一/下］｛同。｝／鱗｛力珍反｝……已は己（コ・キ）。イロコ。 つまり次のように読む。なお、編者（澤潟久孝）による享和本との異同を整理した〔頭注〕★［二/日］―時・骨（又）がつく。

○【新撰字鏡（天治本）】（読み替え後）鰭｛渠脂反。魚脊上骨。伊呂己。｝／鮨｛渠脂反。鮓。｝／鮓｛同｝

○【新撰字鏡（享和本）】鮓｛市恙反。須志。｝鰭｛渠時反｝

○【新撰字鏡（群書類従本）】享和本と同。

○【倭名類聚鈔】巻第十九　鱗介部　龍魚体第二百三十七　鰭　　文選注云。鰭{音耆]。和名波太。俗云、比禮。}。魚背上髯也。唐韻云、髯{音[狂（王→葛）]、又、見牛馬體}。鬚髯也。

○【箋注倭名類聚抄】巻八龍魚部（三十二丁。３８３ページ）　鰭　　文選注云、鰭 、｛音耆、波太、俗云比禮、｝｛○下総本有和名二字、」古事記 有尾翼鱸小鰭鱸也、神代紀、鰭背訓八多、清寧天皇御歌、志毘賀波多傳祝詞、波多能廣物波多能狭物皆是、本居氏曰、波多謂左右鰭、不得背上鬣爲波多、比禮其名、背上鬣左右鰭 、｝魚背上鬣也、｛○所引上林賦郭注文、原書無魚字、史記正義漢書注並有魚字、與此同、」按説文無鰭字、疑古只用耆、｝唐韻云、鬣、｛音[狂（王→葛）]、又 見馬體、｝｛○那波本馬上有牛字、｝鬚鬣也、｛○廣韻鬚作須、按鬚俗須字、又見廣韻、｝

○【倭玉篇（夢梅本・篇目次第）】第二百八十一魚部（1083）　鰭｛巨利切。キ反。イヲノヒレ。ハタ。ヒレ。ホドコス。アヂ。｝／鮨｛同上。｝

○【倭玉篇(慶長１５年版)】下　魚三百四十六（404）　鰭ギ｛ハタ。アヂ。ヒレ。ホドコス。舟ナトノハタナリ。 ｝

○【古事記伝】第十七之巻・神代十五之巻「御幸易の段」（岩波文庫版（四）279〜285頁）（岩波文庫版「古事記」、倉野憲司校注「火遠理命ホヲリノミコト」：海幸彦と山幸彦）故火照命者カレホデリノミコトハ。爲海佐知毘古ウミサチビコトシ而テ。取鰭廣物鰭狭物ハタノヒロモノハタノサモノヲトリタマヒ。火遠理命者ホヲリノミコトハ。爲山佐知毘古而ヤマサチビコトシテ。取毛麤物ケノアラモノ毛柔物ケノニコモノヲトリタマヒキ。爾ココニ火遠理命ホヲリノミコト謂其兄火照命ソノイロセホデリノミコトニ。各相易佐知欲用カタミニサチヲカヘテモチヒテムトイヒテ。三度ミタビ雖乞コハシシカドモ。不許ユルサザリキ。然シカレドモ遂纔ツヒニワヅカニ得相易カヘタマヒキ。爾カレ火遠理命ホヲリノミコト。以海佐知ウミサチヲモチテ釣魚ナツラスニ。都カツテ不得一魚ヒトツモエタマハズ。亦マタ其鉤失海其ツリバリヲサヘウミニウシナヒタマヒキ。於是ココニ其兄ソノイロセ火照命ホデリノミコト乞其鉤曰ソノハリヲコヒテ。……

○現代の字義としては、魚のヒレ、あるいは、音を作る耆＝キと、魚のヒレの形状とが相互に作用し、また小型船舶の帆の形からさらに舟の旗にも通じ、「ハタ」とも訓むようになったのだろう。用例、(２)の場合などがそうで、諸橋大辞典にはハタの訓み（字義）はないが、【漢語林】の字義には、ヒレのほかにハタを加えている。

○この字に注目しなければいけない点が、鮨（すし）の字とのかかわりである。耆と旨の字形の比較のなかで、「キ」の音が「シ」にも通じていき、書写のさいに使用されるクズシ字形とがからみ、鰭と鮨とが兄弟の関係になっていく。この関係については、鮨（６画）の項でメモをまとめておいた。

○参考：鮨（６画）。

○参考：龍魚体：鱗（１２画）。

○

　［養（良→魚）の本字］

○邦名　不詳。〔0807〕（46211）の本字。したがって、訓をあたえれば「フカ」だろう。菱

○参考：サメ・フカ系

　　[鰮]　JIS第２水準[8259]

○邦名（＊1）　(1)イワシ（集覧「日本動物図鑑」）。(2)ウルメイワシ（同「水産名彙」）。(3)鰮仔＝イワシ･オムラ（同「水産名彙」）。（4）鰮魚＝イワシ･オムラ（同「水産名彙」）。

○邦名（＊2）　(1)イワシ（集覧「岩波動物学辞典」）。(2)ウルメ（同「水産名彙」）。(3)サビアユ（同「水産名彙」）。(4)鰛子魚＝オムラ(同｢水産俗字解｣｢水産名彙｣)、イワシ（同水産名彙）。(5)鰛魚＝イワシ（同「水産俗字解」）。

○参考 （イワシ）：[鰯]（１０画）に参考用例を記す。

○

○

　[魚＋貴（貝→田）]

○邦名　用例不詳。……ボラ。

○【新撰字鏡(天治本)】魚部第八十七（520-４）　鯔＊{同作。側持反。}

○【類聚名義抄(観智院本)】僧下四（３）　＊鯔｛通正。音［鯔−魚］。ナヨシ。｝

○参考（ボラ）：[鯔]（8画）。

○

○

　[魚＋倉]

○邦名　(1)ハエ(集覧｢水産名彙｣)。(2)＊魚＝エボダイ（同「実験活用水産宝典」）、イボセ(同｢水産俗字解｣｢水産名彙｣)。(3)＊魚＝マナガツオ(同｢水産俗字解｣｢水産名彙｣)。(4)＊魚＝イボダイ（同「実験活用水産宝典」「水産名彙」）、マナガタ・ウボゼ・アメダイ（同「水産名彙」）。(5)＊[魚＋條]＝ハエ（同「瓊浦偶筆」）。

○不詳。

○不詳。

［］

○不詳。

[魚＋弱][鰯]　　ＪＩＳ第一水準[1683]

○邦名　イワシ。(1)イワシ（集覧「岩波動物学辞典」「水産俗字解」「水産名彙」）。（2）オムラ（同「水産俗字解」「水産名彙」）。

鰮	鰛			鯷
1045（46403） ＊3	0974（記載なし） ＊4	1058（記載なし） ＊5	1058-02（記載なし）＊6	0902（46290） ＊7	1105（46419） ＊8

○【新撰字鏡(天治本)】巻九魚部第八十七　小学篇　[庶]（＊5）　{伊波■（志）}。……「鰯」なし。［是］は、「鮎」として載る。

○【新撰字鏡（享和本）】魚部第七十一　[庶’]（＊6）｛伊和志｝

画像左＊5【新撰字鏡（天治本）】小学篇。★頭注に、「○［＊5］―＊6･波□―和志」	画像右＊6【新撰字鏡（享和本】魚部第七十一。群書類従本も同じ字体と読め省略。		【類聚名義抄(観智院本)】僧下八7行＊8	【類聚名義抄(観智院本)】僧下十四-6〜8行＊9	参考：画像左＠1【新撰字鏡（天治本）】1103（ロウ・ル）／画像右＠2【新撰字鏡（天治本）】1001（ケン）
		【類聚名義抄(観智院本)】百十三僧下三2行＊7

○【倭名類聚鈔】巻第十九　鱗介部　龍魚類二百三十六　鰯　漢語抄云、鰯｛以和之。今案本文未詳｝。

○【箋注倭名類聚抄】巻八龍魚部 〔34〕　鰯　楊氏漢語抄云、鰯 、｛伊和之。今案本文未_レ詳 、｝｛○鰯又見主計式、按鰯字諸書無見、或是皇国製字、新撰字鏡［魚＋庶］同訓、又按閩中海錯疏 、鰛似馬鮫而小、有鱗、大者僅三四寸、是可以充伊和之也、｝

○【箋注倭名類聚抄】巻八龍魚部 〔58〕　鯷魚　　陶隠居曰、［夷］魚、今之鯷也、｛○證類本草上品［夷］魚條引云 、此是［是］也、此所引即是、下総本［是］有魚字、廣本同、_」按本草和名 ［夷］魚条載一名［是］魚、云出陶景注、輔仁所見本草注有魚字、｝四聲字苑云、［是］、｛音題 、漢語抄云、比之古伊和之、｝｛○按主計式有比志古鰯、蓋鰛魚之属、長三四寸者、本草和名［是］為[夷]魚一名、別無和名、｝小鮎魚、黒而少味也 、｛○按 郭璞注爾雅云、鮎別名［是］、江東通鮎為[夷]、陶亦云[夷]魚是［是］魚、則知［是］即[夷]之一名、王念孫曰、［是］亦黏滑之称、［是］之言［米＋是］、釈詁曰、［米＋是］黏也、廣韻則以[夷]［是］為同字、依之、［是］従題省、後世諧聲[夷]字、猶鮎後或諧聲作鯰、然則［是］魚即鮎魚、説文、[弟]大鮎也、四聲字苑為小鮎者、不知何據、以小鮎魚注［是］為二物、非是。｝

○【木簡画像データベース】（奈良文化財研究所）（１）綾所請醤鰯漆合○人七口料○四月十日別当物部弟益・「行少属三嶋大調」 ：平城宮跡推定造酒司宮内道路南側溝（奈良県奈良市佐紀町）（２）縫○御服所請／鯵壱拾陸隻／小鰯一升‖○／安倍庭女○都努稗田／石川尾張○安倍藤子‖○已上四人日料依命婦・宣所請如件○五月廿二日勝安麻呂＼○別当史生阿閉 （平城宮跡推定造酒司宮内道路南側溝）（奈良県奈良市佐紀町 ）

○ＭＡＮＡ事典：「イワシコーイ」の歌舞伎（鰯売恋曳網）について―[もの売り声〕試論―その1　イワシ売り

○参考 （１） イワシ：［魚＋是］（９画）。［鰮］（１０画）。[魚＋庶]（１１画） 。

○参考（２）ウルメ・ウルメイワシ：［鰮］（１０画）。[孚]（７画）。

　［魚＋神’］　[鰰]　　JIS第２水準漢字　code[8264／7260]

○邦名　(1)ハタハタ(集覧｢岩波動物学辞典｣「実験活用水産宝典」｢水産名彙｣)。(2)カミナリウオ（同「水産名彙」）。

○参考：[魚＋雷]（１３画）。

　　[魚＋〈央／皿〉]

○邦名　＊絲魚＝ギギ（集覧「水産俗字解」「水産名彙」）。

○【和爾雅】六龍魚―＊絲（キヾ）魚。……【古事類苑】（1348ページ）より引用。原本に要確認のこと。

○【大和本草(宝永6年版・中村学園蔵書本)】巻十三魚之上河魚―＊●魚キヾ　時珍食物本草ノ註ニ云フ。諸渓河中ニ生ス。長サ５〜６寸、黄褐色、鱗ハ無ク、闊口（大きい口の形）ニシテ、口ニハ細歯有リ。鋸ノ如シ。鰓ノ下ニ硬イ刺（トゲ・ハリ）有リ。骨ハ亦硬シ。善ク小魚ヲ呑ム。肉ハ薄味、短気、味ハ甘平、毒ハ無シ。脾胃ニ益シ、五臓ノ和スルヲ主（ツカサド）ル。小児ノ痘疹ヲ発シ、多食ハ疥ヲ生ス。○処々ノ山中渓河ニアリ。アギ（鰓）ノ下ノ両傍ニヒレ（鰭）アリ。又、背ニヒレ（鰭）アリ。皆、刺ハリナリ。三処共ニ人ノ手ヲフルレバ、人ヲサシテ痛ム。ナマツ（鯰）ニ似テ小ナリ。又、[魚＋條]ノ形ニ少シ似タルモアリ。黄褐色ナリ。処々ニ斑文アリテ、段ヲナスモアリ。長サ３〜４寸、或ハ５〜６寸。山州嵯峨ノ川（京都―山城国・嵯峨川）ニテ、ミコ魚ト云ハ、ギヾノ赤キ也。形状ハ同シ。筑紫ノ村民蜂’振フリ（「ハチフリ」というギギの異名か。「蜂」という字のツクリが「降」のツクリに読めるのは、「蜂」とは別字か？）ト云。ハリアル故名ツク。海ニモ此ノ魚アリ。案ニ、本草ニ之を載セル（名ハ）、黄［桑＋頁］魚、又、黄［魚＋嘗］魚ト号ス。又、［魚＋央］［軋（車→魚）］ト名ス。時珍云。無鱗魚也。身カラ尾ノスガタハ（倶）小鮎（小さなナマズ）ニ似テ、腹ノ下（にかけての部分）ハ黄デ、背ノ上ハ青黄、情（性）最モ死に難ク、反荊芥（どういう意味だろう。イバラやアクタにも非常に強く生き残るというような意味か？）。今、案ウニ、恐クハ、コレ、＊［魚＋系］魚ト同物デ異名ナルヘシ。凡ソ、異名司物多シ。黄［桑＋頁］魚ヲ、タラ、ト訓スルハ非ナリ。

○【同】巻十三魚之下４５丁裏（５）　海＊●魚　　海ノギヽ也。長サ５〜６寸ニ過ギズ。白黒ノタテ筋アリ。其余ハ河ノ＊●魚ノ如シ。

●参考（ギギ）：[桑＋頁]（sonota19画）に用例を総括する：［軋（車→魚）］（1画）。［魚＋果］（８画）［魚＋雨］（8画）。[魚＋罔]（8画）。[鯤]（8画）。［魚＋禺］（9画）。［魚＋毘］（9画）。[魚＋鬲（ル→メ）]（１０画）。[貔（豸→魚）]（10画）。［魚＋(央／皿)］（１０画）。[蠖（虫→魚）]（14画）。／[黄]（sonota12画）。〈参考：［魚＋廷］(７画)。[魚＋亭](９画)〉

　[魚＋庶]

	1058 ―― ＊1	〔記載なし〕		画像左＊3【新撰字鏡（天治本）】小学篇。★頭注に、「○［＊3］―＊2･波□―和志」
	1058-02 ―― 　＊2			画像右＊4【新撰字鏡（享和本】魚部第七十一。群書類従本も同じ字体と読め省略。

○邦名　（1）＊2＝イワシ(集覧｢水産俗字解｣｢水産名彙｣)。マイワシ･オムラ（同「水産名彙」）。（2）＊2魚＝オムラ（同「水産俗字解」「水産名彙」）、イワシ（同「水産名彙」）。

○＊1の字形は、【箋注倭名類聚抄】「鰯」の項（1055参照）、及び『古事類苑』動物部の「鰯」（1419ページ）でとっている。「旁」を「鹿’（广の上の点がクになっている。危の頭の部分に類似。）」の読みかたは、【類聚名義抄（観智院本）】僧下一四に見え、訓みは「イルカ。イハシ」となっている。

○表題字が［国字］であるかどうかは、別にして、「庶」（ショ）あるいは「鹿」（ロク）という旁の字体が、どの字体の書写の過程で生まれてきたかのことを考えるうえで、参考となる字が「兼」＝「婁」である。「兼」を旁とする字体は、もともとが中国では、ニシンの類似魚の青魚に付された字体である。庶と兼が毛筆による崩し字体では、極めて近い類似形を持つことによる、何等かの関係があったことは想像できることだろう。新撰字鏡がまとめられた時代に、字書をまとめる立場にあった、官僚機構や僧侶などインテリの最高峰にある人たちが、中国で使われてもこなかった「庶」という字を、旁の字として意識的に選んで新字形をつくったのかどうか。MANAは、ちょっと疑問を抱いているというわけだ。このあたりのことは、魚字尽論の雑魚名漢字誕生譚でいずれふれることになるだろう。

○参考：イワシ系：[鰯]（１０画）：［魚＋是］（９画）。［鰮］（１０画）。

○参考（２）ウルメ系：［鰮］（１０画）。[孚]（７画）。

　［魚＋連］

○シンニョウ（４画）＋車（１１画）［魚＋迚〈中→車〉］[魚＋漣（サンズイとる）]に記載

　　［魚＋夏］

○邦名　（１）ハエ・ハヤ・フグ・フクベ（集覧「水産名彙」）。（２）＊魚＝サメ（集覧「摂陽群談」）。

○【大和本草（宝永６年版・中村学園蔵書本）】＊ハエ　何レノ川ニモアリ。類多シ。白ハエアリ。大ナリ。赤ハエアリ。アフラハエアリ。昔ヨリ倭俗＊ノ字をハエトヨム。万葉集ニモ書ケリ。出処未詳。順和名抄ニハ鮠ヲハエと訓ス。是亦出処不詳。国俗ノ説甘草ニ反スト云。性味［魚＋條］ニ不及サレトモ頗温補ス。乾タルハ最佳シ。補脾ヲ止潟。

○参考（１）ハエ・ハヤ：［鮠］（６画）。

○参考（２）フグ：

真名真魚辞典ＴＯＰにＢＡＣＫ　　　９画←｜→１１画

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