味探検食単随筆 珍味論その2


 

マンボウは珍味などではない

 

熊野の漁師さんから送られてきた

マンボウ味噌炊きのそりゃーおいしかったこと


 エッセイとしては準備中のため

とりあえずまず写真とメモだけアップしておきます。

 

写真1 マンボウの味噌炊き(冷凍真空パック)

 

写真2 マンボウ味噌炊き(湯せん後盛付けたもの)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マンボウについてのメモ

★JF熊野(熊野漁協)の桑原清志さんから、3月初旬に、取材のとき、食べてみたいということを覚えていてくれて、クール宅急便で、「マンボウの味噌炊き」を送ってきてくれた。(桑原清志さんを紹介した記事は→こちら

 

同封されたメモには、

 

  マンボウの味噌炊き

珍魚マンボウは、外見からは、思いもよらぬ美味で漁師町では、むかしより食されてきました。

調理方法は、様々で食べれない部分はないといわれています。

味噌炊きは、マンボウを炊いてから味噌とネギをからめたものですが、味加減がむずかしく、作り手によって微妙に違います。

このマンボウは、朝、定置網で捕れたものを漁師の奥さん達が昔ながらの手作りで心をこめて作っています。

それでは、珍味マンボウをご賞味下さい。

あなた様も恵洋大敷のマンボウファンになっていただける事を願っています。

  お召し上がり方

真空パックのまま、湯煎して、よい加減になりましたら中身をとりだし、お召し上がりください。

 

○お問い合わせ先 恵洋大敷(桑原)まで

http://www.kumanoshi.com/hp_keiyouoosiki_k3/k3_keiyouoosiki.htm

 

 

とあった。

 

 湯煎よりは、冷凍パックのまま、蒸し器に入れて蒸してみようと思って、沸騰した湯の蒸し器で6、7分蒸し、器にとりだしてみた。

 一口たべて、こりゃあうまい。味噌と適度な甘さで、いい味に調味されていて、肝心のマンボウの身が、シコシコっとした食感で、なんともいえず“こりゃあうまい”とひとこと発してしまった。その日は、締めきりだったのだが、一杯呑まざるをえまいと、焼酎をのみつつ、味わってみた。

 もつ煮込みのモツのようなかっこうに食べやすい大きさに切られて炊き込んであり、たぶん、身も腸のような内臓も一緒に入っているような気がした。ネギやショウガも適度に香味として利いていて、最後は、ごはんにかけて「マンボウの味噌炊き丼」にして、たっぷりのアオネギとハリショウガを刻んでのせてたべたら、こいつがまたサイコ―であった。

 「まんぼうの味噌炊き」を「珍味」というには、これはあまりにもうますぎる。値段をまだ聞いていなかったのだが、そんなに高いはずがない。ひとつ、マンボウさんを見なおすことにして、刺身やら、腸やキモ焼きを食べる機会を作らずばなるまい、と思った次第である。

 

 結局、この日は呑みすぎてしまって、一眠りして早朝の原稿書きと、いつも通りのパターンになってしまった。

 

 そんなマンボウの味噌炊きを体験した、なぜか、数日後、三軒茶屋の「味とめ」という、居酒屋評論家の太田某氏の「東京人」でも何度も紹介されている名物おばチャンのいる飲み屋さんを取材したとき、またマンボウのはなしを聞くことができた。このおばチャンのふるさとが、鋸南町であり、勝山や勝浦からマンボウが入ったときなどには、現地から取り寄せるのだという。夏場にかけて、「まんぼうの刺身」がよくメニューに登場するそうで、今度、入荷の折には、“請う連絡”をとお願いしておいた。その日が来たら、MLにも情報を流すので、所望するかたは、ぜひ、「味とめ」のあの一種独特の某氏が称したという「伏魔殿」に突入してみてはいかがだろうか。三軒茶屋駅を茶沢通りの方角に出て、すぐ交番の前にある「すずらん通り」をはいった出口に近い右手に「味とめ」はある。

 

 

以下は、正式にエッセイとしてをまとめる時のメモ―――

 

★FISHMLへのマンボウについてのメモ(fish4784、fish4762)

 

[fish4762]

●千葉の勝浦のすし屋さんで刺し身を食べたこともあります。房総
ではけっこう手に入ります。ちょうど糸こんにゃくというかカニカ
マボコのような繊維状の身肉の部分を酢味噌のようなもので食べま
した。漁師さんは,あの平らな皮膚の部分を4、5センチほどのア
ツさの真っ白な「皮」を四角く包丁で窓を開けるように切りとって
,その下から出てきた身肉を四本の指を重ねてザクッとスプーンで
掘り出すようにして食べたりもするんだそうです。あんまりこれと
いったはっきりとした味はしません。うまいというシロモノではな
いですけどゲテ食いというほどでもないです。
でも琵琶湖オオナマズさんの書かれた「寄生虫の巣」なんていうこ
とを聞いちゃうと食べられなくなっちゃう。

●食べ方は,刺し身のほか,僕が食べたのは腸を炙ってたべました。

●日本海の定置網には普通に入ります。福井の旅館の人も市場で
買って行きますから、食べてるんでしょうね。

●あと、昨年11月に三重県の和歌山に近い熊野市の木本地区の漁
師さんから,面白い話しを聞きましたので、忘れないうちに書いて
おきますね。

●定置網にマンボウが入ると、漁師さんたちは「マンボウ代」とか
「漁師のもん」と言って、船主の水揚げにいれずに、乗組員の取り
分としているそうです。マンボウを加工する係りのおばちゃんがい
て、解体して「身」「腸」「肝」(なぜか肝だけは目方に入れない
そうです)を自分たちで「味噌炊き」に加工して、それを船主が買
上げてくれるんだそうです。その売上は、乗組員に給料や歩合の配
当とは別のマンボウ配当として臨時収入になるそうです。20キロ
ぐらいだと、一人5000円くらい。おかあちゃんの管轄外のお金
ですから、小遣い銭ですね。タバコやパチンコや一杯飲むのに使う
わけです。年間に10回ぐらいあるそうです。

●マンボウの身、腸の味噌炊きとは、火にかけると水が出てきて、
ぐつぐつと炊いたあと自家製味噌(ツクリミソといっていました)
とネギと、肝をすりつぶして加えて作るそうです。パックにしてマ
ンボウの味噌炊きとして売られているそうです。
これなら食べてみたいですね。食べたことある人、その味加減教え
てください。

(fish4784)
●水族館の人気者のマンボウですが、僕もマンボウの和名語源のこ
とまったく知らないので、ちょっと調べてみることにしました。い
つものごとくアラマタ先生の「世界大博物図鑑」(2―魚類)で調
べてみたら、

◇マンボウの日本名は、こどもの持つお守り袋を「万宝」といい、
丸く平たい形からマンボウと呼ぶ説が紹介されているが、語源につ
いては、どうもこれといったはっきりとした説がみあたらない。
●マンボウの親戚みたいな、まーるいお顔をしたアラマタ大先生に
して決定打なしですから、不思議な魚ですねえ。
◇でも、次のサイトにマンボウの名前の由来や地方名の由来がてい
ねいにまとめられて出ているのでご覧下さい。たぶん、探してもこ
れ以上の説はみあたらいような気がします。

http://www.fis-net.co.jp/topic/fishname/manbou.html

●正確な魚名起源を書く人見必大の「本朝食鑑」や貝原益軒の「大
和本草」などをみても、東北地方の方言「ウキギ」等のいくつかの
方言を列記するのみで、益軒先生にいたっては漢字をあてずカタカ
ナで「マンボウ」と記すのみです(でもこういうカタカナ魚名記述
の少ない本の記述から、なぜマンボウだけがカタカナ表記にしてあ
るのか?ということに疑問をもつことが謎を解くカギであるかもし
れないのです)。「油多ク味ヨシ」と書いてはいるが、人の食習慣
に占める位置付けが低いゆえのことかもしれません。
◇あんまりよくわからないというのが、マンボウたる茫漠として
ヌーボーとした魚柄(ウオガラ)ゆえなのかもしれませんね。

●いずれにしろ、上記FISマリン倶楽部のページにまとめられてい
るように、「満方」と漢字を当てる書がおおいですが、丸い円の形
(見方によっては方形=◆=四角)をした魚を表現していることは
確かなようです。
これぞ決定打というお話をご存知の方ぜひとも教えていただきたい
と思います。

◇なお、僕のお魚に関してのお気に入りページから、国立科学博物
館の「uodas」がおもしろいのでご利用あれ。そのマンボウのペー
ジは、
http://research.kahaku.go.jp/zoology/uodas/ocean_sunfish/index.html


です。

PS:アラマタ先生のネタボンとして紹介されている、江戸時代の医
師にして本草学者の栗本丹洲(1756〜1834)に、マンボウの中国名「翻車魚」から
タイトルをとった、マンボウ研究書「翻車考」(まんぼうこう。1
825年文政8成立)が、古今東西を見渡してみても優れた博物学的価
値のある本のようである。国会図書館にあるそうですから、一度な
にかのおり閲覧でもしてみたいものです。

 

★追記

「国立国会図書館月報」bS78号(2001年1月号)の巻頭“kihon arekore”に上記「翻車考」について中澤彰人というひとが書誌をのせているのを教えてくれたかたがいて、発売先の有隣堂印刷に問い合わせたら送料と代金189円を送れば送ってくれるというので、送ってもらった。それによると、〈内容はマンボウの博物学的なものであり、七つの彩色図(含解剖図一図)と、一七世紀の動物学者ヨンストンの図譜からの彩色小模写図二図および食用や呼称などについての記述からなる。呼称は「まんぼう」の他、浮いている木を連想させるため様子から「うきき」と呼ばれることが多く、さらに「まんざいらく」などとも呼ばれ、表記も「萬寶」「萬歳楽」など様々である。外表紙の次に元表紙、本文一一丁。二七・三センチ×一九・五センチ。〉(後略)、とある。マイクロフィッシュになっていれば閲覧可能なのだが、たぶん閲覧不可図書の可能性が高い。

 でも、一度直接中味をみてみたい資料である。

(MANA)


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