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入会権、漁業権を知るために

―信頼のできる主要重要文献紹介―

(1)平林平治・浜本幸生共著『水協法・漁業法の解説』漁協経営センター、1980年

水協法及び漁業法の解説書。詳しい解説ではないが、両法の全体像を捉えるのに最適。特に浜本氏の漁業法解説は、漁業法を熟知した者ならではの、簡潔にして要を得た解説で含蓄が深い。

 

(2)浜本幸生著『早分かり「漁業法」全解説』水産社、1999年

水産庁で「漁業法の神様」と呼ばれた浜本幸生氏の漁業法解釈や埋立と漁業の関係等が、わかりやすくまとめられている。一九八九年に『早分かりシリーズ「漁業法」』三部作で出されたものに、加筆して一冊にまとめられている。

 

(3)浜本幸生著『共同漁業権論』まな出版企画、1999年

浜本氏が三年の歳月をかけてまとめられた平成元年七月一三日最高裁判決批判。氏は出版直後に逝去されたため文字通りの遺作となった。浜本氏の漁業法と漁業権及び漁業補償に関する論考を総合した集大成の書でもある。今では絶版となっている『漁業制度の改革』をはじめ、過去の漁業法の解説書からの引用文も豊富で、浜本漁業法がきわめて詳細に展開されている。巻末の索引を通じて百科事典的に利用するのもよい。

(4)浜本幸生監修・著『海の「守り人」論』まな出版企画、1996年

漁業権及び地先権をめぐり浜本論文、浜本氏の対談(熊本一規、ケビン・ショート、水口憲哉)、事例レポート(中島満、田中克哲、上田不二夫)が掲載されており、漁業権及び地先権の理解に役立つ。「我妻栄鑑定書」全文や『漁業制度の改革』主要部分など貴重な資料も掲載されている。

(4)―2 佐竹五六・池田恒男ほか共著『ローカルルールの研究―海の「守り人」論 2―大瀬崎ダイビングスポット裁判検証から』まな出版企画、2006年

海や川はだれのものだろう?海や川や湖=水系の管理はだれが担うのがよいのだろう?「入会」(いりあい)や「総有」(そうゆう)って「共有」(きょうゆう)とはどう違うの? 「法律」と「慣習」と本書で提起した「ローカルルール」とが相互補完しておりなす自然と人間と社会経済の関係を根源的に問い直すべく取り組んだ異色の研究者たちによる共同研究の成果がようやく完成した。環境経済・コモンズ社会学・漁業経済・農山漁村の研究者や公官庁関係部署担当者、JF系統・漁協実務者はもちろん 、海や川の利用や環境について関心のある人に必読の書として推薦したい!!

(5)田中克哲著『最新・漁業権読本』まな出版企画、2002年

浜本漁業法の解釈を忠実に解説を加えた、現代の沿岸海域の漁業の利用とマリンレジャーなど市民の海へのアクセスを考慮して漁業権理解をするために書き下ろされた意欲的著作。「読本」という書名にもあるとおり、漁業権の理解のために必要な判例、政省令、条例や地域の海面利用の状況など豊富な実例を併記した、読みやすく、行政漁協実務に適しているだけでなく、学生や研究者などの研究書として利用範囲が広いと確信します。

(6)浜本幸生・田中克哲共著『マリン・レジャーと漁業権』漁協経営センター、1997年

浜本氏の地先権論をマリン・レジャーと漁業との共存、共生に関する事例紹介をもとに展開した書。静岡県大瀬崎沖での漁協によるダイバーからの潜水料徴収に関する静岡地裁・東京高裁判決についての浜本見解も掲載されている。

(7)水産庁経済課編『漁業制度の改革』日本経済新聞社、1950年

昭和24年漁業法の立法担当者による解説書で、現在でも水産庁で「バイブル」と呼ばれている名著。漁業法が、漁協に免許するとの規定、及び組合員が漁業を営む権利を持つとの規定により入会権的権利を近代法で規定したものであることが明確に記されている。戦後の民主化に取り組もうとする立法担当者の意気込みが伝わってくる。残念ながら農林水産省など特殊な図書館でしか蔵書されていないため、入会権としての漁業権の性格についての記述が抜粋して掲載されている前記(4)の巻末資料を利用するといいだろう。

(8)水産庁監修『漁業制度例規集』大成出版社、1997年

昭和24年の漁業法制定以来、水産庁が示した漁業制度に関する通達等を選定し収録したもの。 表記発行年次以後の改訂版(2006年)があるので確認して利用されたい。

(8)―2 漁業法研究会著『逐条解説 漁業法』時事通信社、2005年

漁業法所管の水産庁担当官らが、漁業法はじめとする漁業関係法令、「漁業制度改革」の法制定趣旨、漁業法に関する水産庁が発出した通知など、漁業関係法令に関する公式解釈、漁業関係判例などをもとに、漁業法の逐条解釈をまとめた、最も信頼にたる漁業法逐条解説書である。所管官庁である水産庁の漁業法解釈を受け継いできた専門行政官らによる個人的な「見解」(まえがき、及び判例)という解釈の前提を置いているが、実質的な水産庁の積み重ねられてきた漁業法解釈の公式「見解」の書であるといって差し支えない。(8)の例規集に付ても、本書執筆者らにより編集されたものであり、両書を併用され、利用することをすすめる。これまで、長く、このような逐条解説書が存在してこなかったということも、漁業法解釈の専門性ばかりか、難解な解釈に基づくことが背景にあり、浜本幸生氏らが長く準備し、浜本氏の薫陶を受けた後輩の行政官らにより、発行に至ったことは、法の誤解解釈やかって読みをより少なくするためにも喜ばしいことである。

(9)熊本一規著『公共事業はどこが間違っているのか?』まな出版企画、2000年

いま、膨大な額の予算を投入する公共事業について疑問の声があがり、見直し論議が沸き起こっている。農業用地確保、災害防止・利水のための埋立・干拓、ダム、河川工事などの公共事業について、本当に必要なのか?、どこが間違っているのか?を問いかけ、「漁業権や入会権」の「総有の権利」にスポットを当てながら、Q&Aの形式で、やさしい文体で、その解答を導きだし、検証し解説した、これまでにない刺激的な書となっている。そして、この「総有の権利」こそが、ときに間違いだらけの公共事業をストップさせる力を持つこと、を提起している。朝日新聞「窓」欄ほか、多くの新聞・雑誌で本書の指摘を評価、紹介している。重版、ロングセラー本となった。

(10)熊本一規著『埋立問題の焦点』緑風出版、1986年

志布志湾国家石油備蓄基地建設に関する書で、その第四章で埋立と漁業権との関係を詳細に論じている。文献資料からの引用が豊富であり、本書の見解を文献資料面から裏付けるものとして最適である。

(11)熊本一規著『持続的開発と生命系』学陽書房、1995年

総有の権利が持続的開発の条件を備えていること、また総有の権利を再生・創造することが生命系の社会を復権させることを論じた書。三、四章などで埋立や漁業権について論じている。

(12)中尾英俊著『入会林野の法律問題 新版』勁草書房、1984年

入会権についての分かりやすい解説書。

(13)遠藤浩ほか編『新版民法(2)物権』有斐閣、1968年

第7章入会権(中尾英俊)に入会権、漁業権、水利権についての記述があり、総有の権利の入門書として最適で、かつ入手しやすい。

(14)川島武宜編『注釈民法(7)』有斐閣、1968年

民法についての権威ある解説書。入会権、漁業権、水利権について解説されており、共同漁業権、水利権が入会権的権利であることが明記されている。

(15)小林忠雄編『公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱の解説』近代図書、1985年

建設大臣官房審議官の編者がまとめた、要綱の唯一の解説書。共同漁業権については「補償を受ける者がよく分からないから漁業法上の公式見解をすみやかに明らかにされることがのぞまれる」(42頁)、「総有の財産権は個別補償の原則の例外になる」(44頁)などの記述が注目される。

(14)原龍之介著『公物営造物法 新版』有斐閣、1974年

公共用物、及びその自由使用、許可使用、特許使用について詳しく解説されている。埋立法を理解するうえで不可欠の書。なお、埋立法の解説書としては、山口眞弘・住田正二『公有水面埋立法』(日本港湾協会、1954年)があるが、「埋立免許は公企業の特許に該当する」などという未熟な見解を含んでおり、批判的に読む必要がある。

(15)黒澤一清著『協同組合原論』漁協経営センター、1974年

漁協と漁民による入会漁場=共有資源の共同所有性について、一般的に指摘されている後進性に対して、「しかしながら、それを人間の尺度でみたときにこの社会が遅れていることを意味するものでは毛頭ない。またこの漁場の総有性的管理行使体系は、一朝にして根付資源を一網打尽する「高能率」漁業技術の進出を押さえてきた」という観点を一歩すすめて、「人間と自然との最適な対応、人間―自然系の最適利用という観点」を考慮すべきという重要な指摘を加えている。222頁以降の「漁協と漁民運動」の項には、漁協の主体性問題を視野に入れた優れた先見性を読み取れる。


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